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【ニュースフォーカス】汚水を北上させる「南水北調」プロジェクト

2014年07月11日

【新唐人2014年7月12日】中国の南水北調プロジェクトが一連の問題を引き起こしていますが、明確な解決方法のないまま進行し続けています。例えば、中央線は漢江の丹江口ダムを利用して、北京と途中の各地に水を供給しますが、漢江流域は水汚染が深刻なため、流域には多くのガン村が発生しています。なぜ魚が奇形になったり、死んでしまうような汚水を、北京と天津に送るのでしょうか。報道をご覧下さい。

 

ここ数年、中国大陸では深刻な水不足が一連の問題を引き起こしています。長江の三峡プロジェクトによって、長江の持つ千年来の自然な水量調節機能が破壊されました。中国政府の公式サイトの発表によると、南水北調プロジェクトは三峡ダム建設費用の三倍を超える見込みで、国際世論の注目を集めています。

 

ドイツ在住の水利専門家、王維洛さんはメディアに対し、南水北調プロジェクトが環境に与えるダメージは、三峡プロジェクトよりも更に深刻であると伝えています。また、このプロジェクトの代償はかなり重く、華北地区の水不足問題を解決することは出来ないとの見方をしています。

 

ドイツ在住の水利専門家 王維洛さん

「華北の水不足の原因は、華北が干ばつ地域だからではありません。北京の水が足りないのは、北京自身が水資源を破壊したからで、南部から水を引いても問題は解決できません」

 

東線、中央線、西線の三つに分かれる南水北調プロジェクトは、大流域を最も多く跨いだ世界最大規模の水移動です。プロジェクトは長江、淮河(わいが)、黄河、海河の主要流域をカバーしています。

 

2013年11月、中国国務院南水北調プロジェクト建設委員会弁公室の鄂竟平(がく きょうへい)主任は「中国経済週刊」の取材に応じた際、南水北調プロジェクトは基本的な作業がしっかり行われていないことを認めました。

 

最も基本的な作業とは、北方でどれくらい水が不足しているのか、なぜ水不足が起きたのか、水源である長江、漢江にはどれくらいの水があるのか、北方に送る余分な水はあるのか、水源地の汚染状況はどうか、水汚染はいつ改善できるのかなどの基礎データの収集を指しています。言い換えると、生態環境に及ぼす影響について、整理と分析が出来ていないのです。

 

例えば、中央線では漢江の丹江口ダムを水源としています。漢江には北方に提供できる水がどれくらいあるのかについては、中央線の工事終了直前の今でも、まだはっきりしません。

 

水資源専門家として著名なロビン・クラーク氏は『Water』という本の中で、取水量が地表を流れる雨水の中に占める割合が大きくなるほど、水資源管理の問題は大きくなると述べています。ヨーロッパの経験に基づけば、割合が5%以下であれば問題はないが、20%を超えると深刻な問題が起きるそうです。ゆえに、すぐに救済措置を取らなければ、中央線プロジェクトで送水を開始する日は、漢江の生態系が死ぬ日になると指摘しています。

 

今年1月6日、BBC中国語サイトの中国評論欄にドルトムント大学水資源専門家、王偉洛氏の文章『南水北調、北へ流れる汚水』が発表されました。文章は、南水北調の東線の工事はすでに完成し、中央線の工事は今年中に完成しますが、その後に多くの手におえない問題が続くと指摘しています。

 

また、東線の送水ルートは淮河と平面交差していますが、淮河は30年も汚染処理をやっていても未だに水質が改善していないため、東線の水質を保証する事は難しいのです。天津はあえて南水北調の水を使わないで、廉価で質の良い海水を淡水化した方がましだといいます。漢江流域の水汚染は予想をはるかに超えており、淮河流域はガン村が最も集中している地区であると述べ、漢江流域にもガン村の存在が確認されています。汚染された川の水を北へ送ることは、北京にガン村を発生させるかもしれないと警告しています。

 

四川省地鉱局地質調査隊エンジニア 範暁さん

「東線の主な問題は水汚染です。東線が通過する淮河流域は中国で水汚染が最もひどい地域です。だからこの汚水を送水しても、使うのは難しくなります」

 

政府データによると、南水北調の東線と中央線の沿線には多くの癌発症率が高い地区が存在していますが、プロジェクトの建設によって更に無数の「ガン村」が発生しています。2013年6月2日、南水北調プロジェクトの山東省東平県八里湾ステーションで送水テストが行われましたが、北上してきた大量の汚水を東平湖に入れましたが、これによって湖の魚が全て死んでしまい、漁民たちが泣き崩れました。このように有毒な水が2014年から北京や天津などの都市に供給され始めます。これに対し、香港「アップルデイリー」は、南水北調プロジェクトは世界最大の「ガン誘発プロジェクト」になると予言しています。

 

北京水質環境保護活動家 張峻峰さん

「汚染で黒く変色し、悪臭がし、農地灌漑にも使えない水は正常な方法では使えません。周辺に人が暮らしている場合、健康には大きな脅威です。北京だけでなく、中国の全ての都市がこの様な状態です」

 

この他、専門家は、南水北調プロジェクトは地震などの自然災害を誘発し、沿線住民に深刻な危害を与えるだろうと指摘しています。劉素梅、徐礼華など多くの地震専門家は、『国際地球物理学報』に発表した文章の中で、南水北調中央線プロジェクトの水源地である丹江口ダムは、ダム高をかさ上げすれば、マグネチュード4以上の地震を引き起こす可能性があると予想しています。

 

一方、川筋の開削が進むにつれ、北京のスモッグ、黄砂問題も川に沿って南下することになります。

 

中国の首都、北京のスモッグは2013年1月、世界保健機関WHOの定めた基準値の40倍に達しました。国土面積の9分の1に当たる108万平方キロメートルがスモッグの影響を受けており、全国58の都市のPM2.5指数は、WHOが定めた基準値の10倍以上です。

 

「大紀元」の入手した北京の内部情報によると、スモッグの影響で、北京では毎日1000人が合併症をなどで死亡しており、発覚を恐れた当局が未だに事実を隠ぺいしているとのことです。

 

山東大学の元教授、孫文広さんは大紀元の取材に応じた際、ここ数年、スモックに覆われ、太陽が見えない日が増えており、人の健康に悪影響を及ぼし、肺がんの発病率が非常に高くなっていると述べました。一方、中国当局は何年もの間、GDP成長率だけを追求し、化学工業など高汚染企業の発展に力を注ぎ、深刻な環境汚染を招いたため、多くの都市では太陽や晴れた空を見ることが出来ません。主要な責任はやはり当局にあると指摘しました。

 

中国工程院の鐘南山院士も以前、政府系メディアに対し、大気汚染はSARS(サーズ)よりも恐ろしく、SARSは隔離できるが、大気汚染からは誰も逃れることが出来ないとコメントしました。

 

スモッグはまた、太陽光線を遮り、農作物の生長に脅威を与え、ガンによる死亡者数倍増など、甚大な災難をもたらしています。香港「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」2月25日の報道によると、中国大陸の科学者が、中国のスモッグは核微粒子浮遊物のように光線を遮り、農業生産に災難をもたらすと指摘しています。

 

報道によると、冬と春の深刻な大気汚染は食糧生産に影響を及ぼす可能性があるため、今年は多くの農産品の価格が上がると予想されています。データによると、中国では2012年、食糧輸入が7000万トンを超えており、食糧供給が憂慮されています。中国農業大学のある副教授のグループが数か月間、北京で実験を行い、植物に対するスモッグの影響を測定しました。この測定により、植物が生育するために必要な光合成が急激に遅くなっていることが判明しました。このことは中国の農業に厄介なことをもたらすだろうと副教授は指摘しました。

 

時事評論家 汪北稷さん

「中華民族が生活するこの国土には美しい山河、古跡や多くの自然環境がありました。中共が政権を握ってから、徹底的に破壊的に略奪しました。この国の資源を略奪し、森林を破壊し、野生生物、植物、生物および人々の居住環境を破壊しました。人文環境と自然環境が徹底的に破壊されました」

 

中国のブロガー、顔昌海氏は文章『南水北調憂思(南水北調工程を憂う)』の中で、歴史上、北京市は水資源が豊かで、中国で最も風水の良い都市のひとつであったと述べています。5本の大河が北京市を流れ、うち最も大きな河流である永定河は昔から「小黄河」と呼ばれていました。さらに北京市の水域は非常に多く、万泉河、玉淵潭、蓮花池などがありました。しかし今、海河の大きな支流である永定河はすでに干上がっています。都市への水供給を保障する為、北京市は地下水とダムから取水しはじめました。

 

しかし、過度の取水により、地下水の水位が急激に下降し、1999年の約12メートルから2010年には24メートル、少なくとも12メートル下降しました。このため地盤沈下が始まり、現在北京市は2650平方キロメートルの巨大漏斗(ろうと)の上に位置しているようなもので、建築物、道路、配水管網などの基礎インフラも沈下の影響を受け、破損事故が頻繁に起きています。

 

南水北調プロジェクトによって、最終的に送水する水がなくなり、長江本流からの水で漢江を補うと、三峡ダム下流地区の水不足に拍車をかけることになります。三峡ダムの貯水後、鄱陽湖、洞庭湖の面積は急激に縮小し、湖底が露出する回数と時間も増えています。再び漢江や長江本流から水を運べば、下流地区の水不足はさらに深刻化し、鄱陽湖、洞庭湖の生態系は崩壊するしかありません。そうなれば、また後続のプロジェクトが必要となります。つまり、チベット高原からの送水で、雅魯藏布江(ヤルツァンボ川)、怒江(ぬこう)、瀾滄江(らんそうこう)などの河流から大量に送水し、長江を救うことです。しかし、これらの河川は複数の国を流れているため、汚染問題は最終的に国際事件に発展することになるのです。

 

新唐人テレビがお伝えしました。

http://www.ntdtv.com/xtr/b5/2014/06/29/a1119706.html(中国語)   

(翻訳/赤平 ナレーター/萩野 映像編集/李)

 

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