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何清漣:米国が中国を“世界一の経済大国”と見なす理由

2011年01月26日
何清漣:米国が中国を“世界一の経済大国”と見なす理由

【新唐人日本2011年1月27日付ニュース】米中両国の国民は、自分の国と相手の国をどうとらえているのか。これを比べるのは、なかなか興味深いことである。実は米国人の中国への認識は、往々にして中国人の自国への認識とは逆だ。最近、米非営利の調査機関、Pew Research Center for the People & the Pressが発表したアンケート結果によると、どの国が世界を引っ張る経済大国なのかという問いに、47%の米国人が中国だと答え、米経済がいまだに世界の先頭を走っていると答えたのは、31%に過ぎなかった。

 
しかしGDPで世界第2位に躍り出た新興経済大国、中国で暮らす当の中国人は、ほとんどが自身の生活の質に満足していない。重圧を感じ、前途が見えないと嘆く人も多い。雑誌“人民論壇”の去年12月の調査によれば、共産党や政府の幹部、ホワイトカラー、知識人でもおよそ半分が自分は社会の弱者だと答えたという。去年、中国が世界第2の経済大国になったと世界が驚愕した時ですら、多くの中国人は暮らしの改善を実感していなかった。“環球時報”の調査でも、中国が超大国になったと答えた人は12%に過ぎなかった。これらから分かるように、中国には世界第2の大国になったという高揚感がない。一方、中国人の心の中における、米国の位置づけとはどうなのか。これは、以下の例を見れば一目瞭然だ。政府高官から中流家庭まで、何とかして子供を留学や移民で送り出す。もし、中国人にとって米国のイメージが中国とさほど変わらないのなら、なぜそんな無理をする必要があるのだろうか。
 
米国人が中国を“世界一の経済大国”と見なすのには、何か根拠があるのか。客観的に見れば、根拠となる事実はない。事実、名目GDPで計算すると、米国のGDPは中国の3倍で、一人当たりのGDPも中国の11倍。しかし米国人がこれらの数字には関心がなく、ただ中国の失業率4.3%を羨んでいるようだ。
 
金融危機勃発後、米国の失業率はずっと10%を行き来していた。米国社会には生活困難者に対し、医療や食料、失業保険、生活保護など各種のセーフティーネットがあるものの、それでも多くの人が中産階級から脱落するのをとめられなかった。統計によると、2009年、貧困状態にある米国人は4400万人。医療保険のない人は500万人増加し、すでに5100万人にまで膨れ上がっている。万一への備えがなく、緊急事態に対応できなかった人々である。このような状況の下、中国のあの4%の失業率は、米国人にとって脅威の数字だ。13~14億もの人口を抱え、失業率が何と、人口3億余りの米国よりもずっと低い。自国の膨大な雇用問題をこれほどうまく解決できる中国は、疑いもなく、“世界一の経済大国”だと考えるのだ。
 
中国人はもちろん、当局の出す統計データは当てにならないと知っている。これは、上は総理から下は庶民まで周知の常識である。しかし、偽の統計データを出すのにどれだけ中国政府が苦心しているのか、米国人は知っているのだろうか。当然、中国の公式統計データ同士でさえ、矛盾が絶えないなど、さらに知るよしもないはずだ。国家統計局のデータによると、2009年中国の実際の失業率はおそらく、10%近い。一方、2010年9月国務院新聞弁公室が出した“中国人力資源状況白書”
http://www.gov.cn/zwgk/2010-09/10/content_1700095.htm)には、こんな数字が並んでいる。2009年末で、中国大陸の労働力人口は、10億6,969万人。都市農村就業者数は合わせて、7億7,995万人。この数で計算すれば、中国では少なくとも27%の労働力人口が失業していることになる。
 
米国人は“登記失業率(訳注、都市戸籍を有する者の中で、失業登録を行った者のみが対象)”の“登記(訳注、登録の意味)”の名詞の持つ不思議な力を知らない。この中国の特色あふれる2文字によって、失業率は大幅に圧縮できるのである、このため、米国人は中国が世界一の経済大国だと勘違いする。しかしこれは米国人が悪いわけではない。朝から晩まで中国の宣伝を研究している学者(華人だけに限らない)は皆、中国の繁栄を声高に叫んでいるからだ。学者がこうならば、普通の米国人は、中国の大多数の農村はアフリカのようだと知るよしもない。この経済が後退した2年、中国の富裕層が海外旅行先で、惜しげもなく大金をばらまいている。これにより、パリや東京、NYのブランド店は、中国人の経済力を肌で感じたのだった。さらに北京五輪、上海万博、アジア大会、政府は大盤振る舞いだったが、このような黄金の国に、なぜあれほど貧しい状況が存在するのか。
 
これだけではない。金融危機を受けて、米国の
“シカゴ・トリビューン”“フィラデルフィア・インクワイアラーザ”など老舗新聞社が次々と閉鎖したほか、“ニューヨーク・タイムズ”も資金繰りに行き詰った。それとは対照的に、中国は外国人記者を高給で招き、新華社の各海外分局で働かせている。中国政府出資の孔子学院は、欧米ではこれよりももっと目に付く。
 
胡主席の訪米前、中国のイメージアップCMがニューヨークのタイムズ・スクエアで繰り返し8400回も流されたほか、BBCやCNNのゴールデンタイムにも放送された。 一国がこれほどまで、ためらいもなく大金をはたくことができるとは、どれほどの発展を遂げた国なのか。米国人の目に映る中国が“世界一の経済大国”なのも、まったくおかしくはない。
 
当然、中国政府も時折、“世界に真の中国を見せる”必要性を思い出す。例えば、温家宝首相は9月26日、国連総会に出席した際、このタイトルで演説をした。その際、“中国のGDPの合計は世界の3位だが、中国にはまだ1億5,000万の貧困人口のほか、8億人の雇用確保の問題もある”と発言。しかし中国政府は一貫して、海外への大々的な宣伝こそ、中国の“平和的な台頭”の要だと考えている。つまり、温首相の国連のあの特殊な場での演説は、中国が責任を負う必要がある時に、後部座席に乗ることを世界に意識させたに過ぎないのだ。
 
上述をまとめれば、中国が“世界一の経済大国”だというのは完全に、中国の大々的な対外宣伝が並ならぬ成功を収めた結果に過ぎない。この果実が苦くとも甘くとも、すべては中国人が自らじっくり味わうことになる。
 
ボイス・オブ・アメリカの作者のブログから転載
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