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季札剣を挂(か)く (季札の宝剣)

2015年12月16日
季札剣を挂(か)く   (季札の宝剣)

【新唐人2015年12月16日ニュース】

   

季札(きさつ)は、中国春秋時代の呉で活躍した政治家。姓は姫。呉の初代王寿夢の少子。清廉賢哲を以って知られ、延陵の季子として知られる。王位を拒む。

 

 呉の季札は、呉王寿夢の末子だった。孔子と名声を等しくする聖人、同時に孔子の最も敬慕する聖人だ。「南の季、北の孔」と称して、歴史の上で南方の儒学大家の第一人者、「南方の第一聖人」とも称される。孔子にこう評価されている。「泰伯(季札の祖先は呉太伯)は道徳の聖人で、三回も天下を譲り、人民には貴重な君主だと語る」

 

紀元前544年、季札は君主の命令を受け、呉の使者として北方にある魯国に赴くことにした。彼は従者を連れて呉から出発し、途中、北方の徐の国境を通過した時、徐国の人民が生活が豊かで、安らかに暮らし楽しく働いているのを見て、思わずひそかに称賛する。「徐国の君主はいままでずっと人情を重んじるとの天下の名声を聞いて、今日は百聞は一見に及ばず、やはり名に恥じません」。そこで、彼は臨時に徐国の君主を訪問することを決め、敬慕の気持ちを打ち明けようとした。徐国の君主はとっくに季札の賢い名を、ある程度噂で聞いて、彼がわざわざ訪れるのを知り、心中は大変嬉しかった。急いで召使いに宴席を設け、情厚く接待するように命じた 。二人は非常に話が合い、徐国の君主は、季札の帯している剣を見て大変気に入り、何度か口出そうとしたがあえて剣を欲しいと口にしなかった。賢い季札も、その思いを察したが、自分はこれから上国(地位が高い中華の国)への使者としての任務があるので、国の使節として礼儀作法を考え、もしも今この寶劍を徐国の君主に贈ったら、魯国への無礼と思われかねない(公務に剣が必要)と思い、あえて自分の宝剣をその場で徐国の君主に贈る考えをやめた。しかし、彼はすでに心の中で決めた。魯国への任務を終え、帰りに必ず剣を徐国の君主に贈呈する 。

 

徐国の君主に別れを告げ、季札は従者を連れ、魯国に向って出発し、魯国の君主に親切な接待を受けた。季札は自分の才気と知恵で魯国の国民の人気と尊敬を集めた。魯国で一年余り滞在した後に、季札が呉への帰路を踏み、この時彼は徐国の君主への約束を忘れることなく、再び徐国の国境を通った時に、徐国の君主を訪れることにし、自分の約束を果たすため、立派な宝剣を徐国の君主に贈呈したいと思った。しかし、彼は非常に不幸な消息を知った。徐国の君主はすでに亡くなっていたのだ。これに対し、季札は深く悔やみと悲しみを感じ、剣を解いて、徐国の今の継承者に贈ろうとしたが、季札の従者がそれを阻止する。「この立派な剣は呉国の国宝で、どうして惜しまず人に贈るのですか?徐の君は、もう亡くなられました。まだ贈る必要があるのでしょうか?」

 

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「そうではない。前回、徐国の君主に訪れた時に、私は彼に宝剣を贈らなかった。魯国への任務をまだ果たしていなかったからだ。最初、私は自分の心中で、任務を果たしたら、この剣を徐の君に差しあげようと決めていたのだ。その方が亡くなっても、どうして私は、心に決めた約束を破れるだろうか?自分の良心を騙せるだろうか?いやできない。それに、私は呉国の若君の使節として、このように信用を重んじないで、世間にどうやって呉国の体面を保つことが出来るだろうか?他の人はどうのように私達を見るだろうか?」

 

 徐国の新君も剣を受けようとせず、「私は先君の遺言が無く、こんな宝剣を承ける訳にはいけません」

 

そこで、季札は寶剣を徐君の墓前にある柳の木に挂(か)けて、立ち去った。

 

 

立ち去った季札は延陵という土地に封じられた。そのため、「延陵の季子」と呼ばれた。『新序』に書かれていた話では、徐の人々は季札を褒め讃えて、こんな歌をつくった。「延陵の季子は、昔を忘れない。千金の価値がある宝剣を解いて、徐君の墓に挂けてあげた」。そのため、「季札が剣を挂ける」という故事が広く伝わった。

 

 「季札剣を挂く」という故事から、私達は「誠実と信用」という2つの文字の深い意味を読み取ることができ、それは最も人を感動させる処である。季札は亡き人に対してもその約束を守ろうとしたが、しかも彼の約束は心の中にしか存在しないものであった。徐君は決して彼の考えを分かっていない。このような崇高な境涯は本当に人を感動させるものである。宝剣を挂ける一幕は古人の貴い義理を演繹した訳で、忠実の大切さを伝承した。昔から、「一言にとても重みがある」、「約束は必ず守る」などの語句はすべて誠実で信用を守る人への最高の誉め言葉です。誠実で信用を守ることは、具体的に言うと、人へ約束した事にベストを尽くし必ず実現させること。これは一人の人柄と処世において最も基本的なルールである。 誠実と信用は一種の道徳品質だけではなく、それは能力であり、このような能力は他のいかなる能力に比べて百倍も勝るものである。  

 

http://www.ntdtv.com/xtr/b5/2015/11/12/a1235194.html (中国語)

(翻訳/姜)

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