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【世事関心】二面性を持つ中国どこへ・危機(4)―中国経済の宿命

2013年01月14日
【新唐人スペシャル】【新唐人2013年1月15日】10年前ないし5年前まで誰かが「中国経済は問題が生じた」と発言したら、たちまち孤立してしまうでしょう。しかし、今、状況が一変しました。
 
 2010年10月、香港中文大学の郎咸平(ろうかんへい)教授が中国の瀋陽市で非公開の講演を行いました。講演の録音はたちまちインターネット上に広く出回りました。講演のテーマは至ってシンプルです。“中国政府は破綻した。中国経済はもう重症だ”
 
司会者 蕭茗
 世界に目を向ければ、郎教授に限らず、他の経済学者の見解も変りました。中国モデルを声高らかに讃えていたあの情熱が、中国経済の未来への憂慮に変りつつあります。
 香港上場の中国主要企業の業績を示すハンセン中国企業指数が、2010年の1年間で26%も下落し、アジア株式市場の最も暗い一幕となりました。
 
 中国本土の株式市場は以前から雲行きが怪しくなり、上海株式市場指数は2011年5月から30%も下落。2008年から計算すれば、4年間足らずで60%も下落しました。これは何を意味するのでしょうか。1930年代アメリカが大恐慌に陥った時、1929年から1933年までの4年間、株式が同じ幅下落しました。
 
しかし、最も世界をあっと驚かしたのは中国の不動産価格。とうとう下落が始まったのです。
 
司会者 蕭茗
 もちろん、一部の経済学者は中国経済を楽観視しています。しかし、アメリカ・ノースウエスト大学の経済学者ビクター・シー(Victor Shih教授の言葉を借りれば、中国経済を“楽観視”または“悲観視”するいわゆる比較的冷静な専門家のどちらも、中国経済の現状についてほぼ同じ見解を持っています。ただ中国政府に苦しい変革を起こす能力があるどうかについては、それぞれの見解を持っているといいます。
 
 では、果して中国政府には変革を起こす能力があるでしょうか。実際のところ、これこそ中国経済が困難に直面したとき、既に過去に影響を与え、今後の行方を決定する要因であり、本番組が探ってみたいテーマでもあります。
 
今現在、中国経済の楽観論、慎重論と悲観論の専門家のだれもが認めている事実とは何でしょうか。それは、“中国経済構造の不均衡”と“持続不可能な成長モデル”です。
 
まず、中国経済構造の不均衡を見て見ましょう。
 
周知の通り、中国には“トロイカ”の説があります。つまり、GDPの牽引役である投資、輸出と消費です。しかし、この3役に1つも漏れず、問題が生じたのです。
 
2006年にアメリカのサブプライムローンに端(たん)を発した金融危機を見事に予測し、また、危機が著書「金融災難への12ステップ」に描かれた通りに展開したことから、一気に世界の注目を浴びたマクロ経済学者ヌリエル・ルービニ(Nouriel Roubini)教授は、2011年4月に論文を発表し、中国経済は短期および中期成長目標の間に不安を引き起こす大きな矛盾を抱えていると深く信じていると述べました。テーマは“中国経済成長の誤算”。
 
中国経済構造の不均衡の1つは、GDPに占める消費の割合が非常に低いことです。90年代末の48%から今は36%に落ち込み、この数字はアメリカの半分です。では、中国の内需が不振だったら、誰が余った製品を消費するのでしょうか。ノーベル経済学賞受賞者クルーグマン(Paul Krugman)氏は、その大半が国際市場によって消費されたと答えました。
 
つまり、経済全体を占める消費割合の低下とともに、中国は貿易黒字に頼って製造業の安定的成長を維持してきました。これが中国経済構造の2つ目の不均衡です。GDPに占める輸出の割合が高くなり、2010年には25%にはね上りました。一方、アメリカの輸出はそのGDPの8.7%しか占めません。
 
GDPに占める輸出の割合が高すぎる事は、国民経済が海外市場への過度な依存を招きました。輸出割合の高すぎることは、経済構造の不均衡に過ぎず、この不均衡が致命的な問題を来たすとは言えません。しかし、中国経済の全体環境の特殊性、つまりGDPの50%を占める固定資産投資がもたらす経済効果は微々たるもので、残りの25%の製造業の輸出が収益を上げる部門になり、中国経済の生命線になるわけです。しかし、ここ数年、この生命線が度重なる外国情勢の変化と中国共産党の国内政策によるダブルパンチを受けています。
 
内需が少なく、輸出が多い。貿易黒字に頼って製造業の成長を維持してきた結果、国際市場への過度の依存を招きました。しかし、これはまだ中国経済の最も深刻な問題ではありません。ノーベル経済学賞受賞者クルーグマン氏は、中国経済の最も深刻な問題は、GDPにもっとも寄与した“投資”であると述べました。
 
中国の固定資産投資はGDPに占める割合が高すぎるだけでなく、年を追って増え、2010年から2011年の間すでに50%に達しました。イギリス“デイリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)”は“中国、二日酔い後の長い痛みが始まった”というタイトルの文章で、中国の投資のGDPに占める割合は危険な数値であり、かつてアジアNIEs(ニーズ)もこのような猛烈な投資は経験したことがないと指摘しました。実際、現代経済史上においても、これは未曾有の数字です。
 
では、消費が低下しているのに、一体どんな要因が投資の増加を促しているでしょうか。その大半は絶えず膨らみつつある不動産のバブルです。2000年から不動産投資のGDPに占める割合がほぼ倍増し、残りの成長も不動産の需要に追いつく為に、不動産関連企業の生産拡大によるものです。この他、地方政府の政治業績の為の大量のインフラ整備、鉄道、道路、空港等があります。
 
司会者 蕭茗
 これらのプロジェクトの合計がGDPに占める割合は50%。この大胆な数字の裏に隠れているのは“避けられない過剰”です。つまり固定資産投資が飽和状態になると、鉄道、道路、空港がこれ以上作れなくなります。この日は近い将来必ず到来します。ルービニ氏は2013年初め頃だと予測しました。その時になると、中国経済の成長が急に失速します。そして固定資産の過剰投資が生産能力の過剰を来たし、稼働率の低い鉄道、道路、空港などは長年かけて償却する必要があるので、かつての日本のように中国は長期にわたる深刻な経済後退が続くことになります。
 
 この情勢の中、生産能力の過剰のほかに、また銀行の過剰融資もあります。過剰投資は確かに過剰に融資したからです。国営企業や地方政府は銀行から大量に金を借りている上、地方役人の実績評価もGDPが基準とされているので、地方政府が地方公共支出を増やして、地域のGDP成長の後押しに熱をあげるようになります。地方政府の大掛かりな借金は既成事実となりました。
 
しかし、このような支出はほとんど収益性がないか、もしくは微々たるものですから、土地を売って借金返済に充てる以外、方法がありません。従って、借金は銀行の潜在的な巨額の不良債権になります。
 
 アメリカ格付け会社ムーディーズ社の2011年7月の研究報告書によると、中国の地方政府の債務は19.5兆ドルで、政府の予測より5400億ドル多く、うち8%~12%は不良債権です。
 
アメリカ経済学者ビクター・シー教授の研究によると、地方政府、中央政府と国営企業の債務を合わせれば、中国政府の総負債率はもうGDPの150%に達しました。経済が急成長して、市場に十分な資金が流動されている時は、債務問題は目立ちません。しかし、一旦経済が減速して、国営企業が破産に追い込まれる時、債務問題が浮き彫りになります。郎咸平教授は、中国政府は実際もう破産していて、各地方は皆ギリシアだと指摘しています。
 
司会者 蕭茗
 一連の事象は中国経済が近い将来、必ずこの苦い果実を味わわざるを得ないことを語っています。幸か不幸か分りませんが、中国が将来この苦い果実を味わうことはあるのでしょうか。中国経済の頭上に振りかかってくる剣である不動産バブルがすでに弾けはじめ、中国経済の本当の柱である製造業も問題が発生しているからです。
 
 景気の先行きを示す指標の一つである製造業購買担当者指数。この数字が50以上なら経済が上向きを意味し、50以下なら下向きを意味します。2011年7月から中国が世界より率先して50を下回りました。実際、2008年以来、広東省東莞(とうかん)、珠江デルタ、浙江省温州、長江デルタなどの企業が次々と倒産。温州だけでも2010年4月から10月までの間、莫大な借金を抱えた80人以上の企業オーナーが首が回らなくなり、行方をくらまし、さらに自殺しました。
 
温家宝首相は2012年1月3日、経済界に年頭賀詞を述べる際、“今年第1四半期はかなり厳しい”と、警報を出しました。
 
司会者 蕭茗
 これらの全てから読み取れるメッセージは、中国経済に厳冬がやってきたことです。しかし、先ほど触れたように中国経済の将来を楽観視している人もいます。ノーベル経済賞受賞者クルーグマン氏の話を借りれば、こういう人達は、中国の指導者は有力かつ賢明なので、如何なる代価をも惜しまず経済後退を食い止めるだろうと信じているのです。
 
 では、“いかなる代価を惜しまない”ことで、再び中国経済を奮い立たせることができるのでしょうか。また、この“いかなる代価を惜しまない”ための代価は何なのでしょうか。実は多くの者が共産党指導者の“如何なる代価を惜しまない”の真意を読み取りました。すなわち、中国共産党が短期内に経済を後退させない為に支払う代価は、1~2年後あるいはもっと短い期間後、中国経済が長期の深刻な衰退期に入る、更には崩壊するということです。
 
 中国経済構造の不均衡と持続不可能は秘密でもありません。中国当局さえ中国経済の構造を変える必要があると認めています。そうしなければ、成長を維持するどころか、崩壊する可能性さえあるからです。
 
 では、中国経済はどのように転換していくべきでしょうか。答えはもう目の前にあり、明白です。それは内需を増やし、国民に富を渡すとともに、GDPに占める投資の割合を減らすことと、産業構造を転換し、ローテクの加工産業をハイテク産業に転換し、輸出型経済構造を変えて外国市場への依存度を減らすことです。しかし、我々は違う光景を目にしています。中国政府は声高らかにこのような転換を行うと示しながら、多くの場合、この明らかな解決法に従って実行していないのです。郎咸平教授を含む多くの者は、中国の指導者はレベルが低いから、情勢を見極めていないと声高に批判していますが、果して本当にそうでしょうか。
 
 もし、良く分析すれば、中国政府が選択を迫られたとき、直面している困難と考慮すべき要素は、普通の政府とは違うことに気づくでしょう。つまり、特殊な困難があるのです。どんな困難でしょうか。それは中国共産党の現在の政権基盤は経済の高成長という生命線に懸っていることです。GDPの高成長、中国経済の高成長は中国共産党が政権を維持していける唯一の支えなのです。したがって、どんな状況でもGDPの成長スピートはある一定の数字を下回ってはならないのです。
 
 どんな社会でも経済構造転換は陣痛が付きものです。しかし、中国共産党が耐えられないのが、まさにこのような陣痛です。自分自身が経済成長を除いて、政権の正当性のすべてを失った今、どんな陣痛も不穏をもたらし、政権の終焉を迎えることになることを知っているからです。
 
 従って、このような状況下では、多くの処方箋が効きません。中国経済の投資の割合が高すぎるという点だけを取り上げてみても、中国当局は当然知っています。ここ数年口酸っぱく内需を増やし、産業構造を変えると言っていますが、経済学者ルービニ氏は中国共産党の2011年から2015年の“第12次5カ年計画”から見ると、実際、投資の割合は引き続き増えていっていると指摘しました。
 
 
司会者 蕭茗
 この言動不一致は一体どうしてでしょうか。理由は簡単です。投資は短期間に中国のGDP成長を引っ張るもっとも有効な方法で、実は今唯一の方法でもあるからです。こうすれば中国経済構造が更に不均衡になり、近い将来中国は長い経済衰退に陥ります。しかしこれは優先的に考える事項ではなく、あるいは考える余裕すらありません。
 
 中国のGDPの増加が8%以下減速してしまうと、中国共産党当局が耐えられない2つの結果が現れます。まず、中国経済がもう期待されなくなり、共産党政権の正当性が失われることを意味します。GDP成長が8%を下回ると、失業率が大幅に上昇します。中国社会の至る所に危機が潜んでいる現在、失業率の上昇は間違いなく共産党政権を倒す最後の稲わらになるでしょう。
 
 アメリカ前大統領ブッシュ氏の回想録によると、胡錦涛主席がアメリカを訪問した際、ブッシュ氏の“何が一番の悩みなのか”の質問に対し、胡主席は“毎年2500万人の雇用を作り出すことが最も頭の痛い事だ」と答えたそうです。
 
 これは胡錦涛主席の本音だと、我々は信じています。 さらに、“保八作戦”を見て見ましょう。
 
2008年に金融危機が世界を襲った時、温家宝首相が金融危機に対応するために打ち出した一連の計画には、4兆元経済刺激計画、10大産業振興計画などがありました。中国政府の公式サイトではこれらの計画を「保八作戦」と名付けています。つまり、GDP成長率を8%以上保つことです。
 
中国国家発展改革委員会経済社会発展研究所の楊宜勇(よう ぎゆう)所長はメディアの取材の際、“産業振興の目的はやはり8%を維持するためであり、経済成長がもし8%に達しなければ、失業問題がさらに厳しくなり、社会問題を引き起こす。産業の振興は単なる経済問題ではない”と述べました。
 
しかし、“保八”の結果はどうなったでしょうか。
 
米サウスカロライナ大学 謝田教授
「過去3年間の中国中央政府の一部の政策からその結果を見ています。つまり、中央政府の投じた4兆元、プラス地方政府とその他ルートで投じた10数兆元の経済刺激策は、ただGDP成長率8%を維持するためです。実際これらの資金はインフラ整備や鉄道、道路、空港の建設に投入されました。その結果がすでに見えています。道路はすでに実際の需要を上回り、鉄道も同じです。高速鉄道の建設は事故と効率の低下を受けて、資金不足のため高速鉄道工事がもうストップを掛けられています。空港の建設で我々が目にしたのは多くの中小都市で空港が出来ていながら、実際は定期便が飛んでいない。乗客もいません。このような投資はGDPの成長をもたらし、全国のGDPを1~2%増加させますが、実際にはこのような効率の悪い投資は経済成長刺激のメリットがあって、一次的な臨時雇用を作り出しますが、中国経済のレベルアップと中国政府の望む、産業のアップグレードには何のメリットもありません。
 
もう1つはこの8%維持の結果は、つまり、10数兆元の投入が今日のインフレを引き起こしました。この高止まりのインフレの代価は一般民衆の資産の大幅な目減りなので、民衆の不満が噴出しています。本質を見れば、8%維持とインフレ抑制の両者の間で、政府が選んだのは政権の安定を脅かす、失業率の上昇を防ぐ道です。その措置を取った結果として中国民衆の福祉を犠牲にしました」
 
 8%維持の目標を達成したとき、中国メディアは“中国が世界経済の回復をリードした”と誇らしげに報道しました。しかし、その成長の本質は依然投資を増やすことで、中国経済構造の不均衡を更に拡大させました。
 
 実際、中国にとってどんな処方箋が必要だったでしょうか。
 
米サウスカロライナ大学 謝田教授
「処方箋はあります。海外の経済学者が指摘したように、3年前もしくは過去10数年の間、中国政府がやるべきことは富を国民に帰し、富を国民に蓄えることでした。つまり、インフレで搾取した利益、外貨を横取りして搾取した利益、過去20年間で中共特権階級が国民から搾取した利益を国民に帰すことです。例えば、中国の外貨準備高、この3兆ドルの外貨準備高を使って、外国製品を輸入すれば、中国国内の物価上昇を抑制でき、インフレの圧力を軽減して、人民の生活レベルが上がることに繋がります」
 
 しかし、中国にとってもっとも必要なこの処方箋はすぐGDPの成長に効果が表れないので、採用されるにはいきません。成長率8%を維持しなければならないのは、それが共産党政権の基盤だからです。
 
司会者 蕭茗
 共産党支配という枠組みの中で、今日まで至った中国経済に効きそうな処方箋はほぼなくなりました。一方、先ほど触れたように、中共がGDPの成長を保つ前提があるがため、多くの処方箋が使えません。この他、例え1万歩退いて、共産党当局がこれらの処方箋を使う決心をしたとしても、長年不適切な運営によって、中国経済の問題がもう異常に複雑に入り組んでいるため、多くの処方箋が実際得策にも愚策にもなりません。或いは、一旦この処方箋によって特権階級の既得利益が再配分されるものなら、たちまち実行不能な空想に終わってしまうでしょう。
 
 中国で内需拡大ができないことを例に挙げて説明しましょう。
 
 共産党当局は近年、内需拡大を度重ねて強調しています。実際中国の内需がずっと拡大できない本当の理由は、共産党当局の政策が招いたもので、GDPに占める中国国民の賃金の割合は世界でもほぼ最も低いのです。
 
 2009年、この数字はアメリカで58%、イギリスで56%、日本で53%、韓国で44%、アルゼンチンで36%、メキシコで33%、タイ、フィリッピンで28%、イランで25%。しかし、中国では8%でした。
 
 こんな低い賃金はあくまでも平均数です。中国30年間の改革開放は深刻な貧富の格差を招きました。貧困側に取り残されたのは絶対多数の庶民で、特に9億に上る農村人口の懐は尚更寒いものです。その上、住宅、医療、教育の「3つの大山」の費用は、庶民の日常の衣食支出から捻出しなければなりません。このように繰り返し傷めつけられると、庶民が消費に回す金はほとんどないのです。
 
 このほか、中国の貨幣政策も中国庶民の購買力を低下させ、内需を拡大することができない主な原因になっています。
 
 人民元を過小評価して輸出を促し、輸出を持ってGDPを引っ張る。これは鄧小平時代から始まり、中国共産党が経済成長のために決めた重要な戦略の1つです。この戦略が庶民にもたらした直接的な結果は、過小評価された人民元が庶民の購買力を低下させました。同時に、輸入商品は価格が高いため中国で競争力を失います。これで、国営企業の存続と利益が守られ、同時に人民元が人為的に低く評価されるため、輸出企業が利益を得やすくなるので、輸出を促進しました。この意味で、中国人全員が輸出を助成していると言えます。
 
司会者 蕭茗
 結局、いわゆる中国経済の高成長は実質的には“国進民退”の成長モデルです。中国共産党の一部の政策は庶民のポケットから金を政府、特権階級、国営企業の口座に移しています。これは中国内需不振の根本的な原因です。では、この現象を逆転し、庶民のポケットの金を増やすには、共産党当局は何をすべきでしょうか。
 
 まず、大幅に賃金を増やすことです。共産党政権はいま国民の賃金増を何度も強調しているものの、民間では却って賃金がいくら上がってもインフレ高進に追いつかないのです。事実上、中国国民の賃金を今のレベルからGDPの50%以上にまで上げるために必要なのは、決して賃金を数回上げるようなうわべの変革ではありません。一方、人口の絶対多数の農村人口および都市部住民の収入を大幅に増やすと、中国はたちまち耐えがたいインフレに見舞われ、同時に社会全体の分配システムが大きく変わり、国の財政、国営企業に分けられるパイが大幅に縮小することを意味します。利益既得階級がこの変革を納得するか否か、容易に想像が付きます。
 
 中国人の購買力を高めるもう1つの方法は、人民元の切り上げです。今現在の人民元の値上がりは決して中国共産党政府の本願ではありません。中国庶民の購買力と生活レベルを高める為に行われたものではなく、国際社会の圧力によるものです。しかし、人民元の切り上げは両刃の剣であるため、値上がりの結果は中国の輸出に悪影響を与えます。前にも触れたように、中国経済の実質的な基幹は製造業の輸出ですが、いま欧米市場の委縮という大きな衝撃を受けています。更に人民元を切り上げされたら、明らかに泣き面に蜂です。製造業の従業員の大量失業にも繋がります。
 
司会者 蕭茗
 本質から言えば、中国は内需を拡大するには利益分配の構図を変える必要がありますが、鬩(せめ)ぎ合う双方は片側が権力を持たない庶民で、もう片側は権力をもつ特権階級です。この結果は誰でも想像が付くでしょう。
 
 内需をこれ以上拡大することができない状況の下、中国共産党政府のGDPの成長を保つ手段は2つしかありません。1つは投資を増やし続けること。もう1つは輸出を促し続けることです。2つ目は欧米市場の縮小によって道が塞がれてしまったので、残りは1つ目だけで、投資を増やすことです。しかし、このまま続けていくと、目先の数年間の経済高成長のために払う代価は、今後数十年乃至もっと長い期間の経済後退または崩壊です。
 
 共産党の支配と中国経済の未来はすでに妥協する余地のない対立に変ってきました。したがって、共産党が引き続き居座れば、これが中国経済の宿命的な行方です。
 

翻訳/中山 編集/坂本 ナレーター/大口 村上 映像編集/工)

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