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龍の話―中国人から愛される龍

2010年11月14日

 

冒頭の詩

風も雨も自由にあやつる

深い淵(ふち)から一気に天上(てんじょう)へ

大雨小雨この世に降ると

生きた神龍(しんりゅう)が目の前に

登龍門(とうりゅうもん)越えは至難(しなん)の業

龍や鳳凰(ほうおう)になるのは大変だ

 

登龍門:中国の言い伝えでは、鯉(こい)が「登龍」と呼ばれる急流を上れれば、龍になれるといわれる。そこで、出世や入学試験など越えるのが難しい関門のことを指す。

鳳凰:クジャクに似た中国の伝説の鳥。鳳はオス、凰はメスで、羽ある生物の王とされる。

 

 

あらすじ

中国人と切っても切り離せない龍。古くから皇帝は、龍の衣装や冠を身に着け、庶民は雨乞いや安全な漁を、龍に祈る。というのも、龍は神の世界にいる獣(けもの)、すなわち神獣(しんじゅう)とされているからだ。今回はそんな龍にまつわる逸話をご紹介。

 

ある日のこと、八仙の一人、李鉄拐(りてっか い)は中国・杭州(こうしゅう)の西湖(さいこ)に降り立つ。八仙といっても、その薄汚れた姿は物乞い同然だ。だから、誰もが李鉄拐を避けたのだが、心優 しきある若者は、李鉄拐を自宅まで運び手厚く世話をした。李鉄拐はその恩返しとして、金色(こんじき)の龍を壁に描く。その後、この若者の実家の薬屋「朱 養心(しゅようしん)」は大変繁盛したが、逆にねたまれるようになった。そして放火に遭って、建物が火に飲み込まれそうになったその時……

 

この若者と「朱養心」の運命は見てのお楽しみ だが、この逸話は深いメッセージを残す。人は他人を傷つけてはならない。他人を傷つけたら、その借りは必ず自分で返す。逆に良いことをすれば、思わぬ幸せ が訪れるかもしれない。だから、悪い心を捨て、常に優しさを心に保つこと。実に当たり前のことを今さらながら、考えさせてくれる話だ。

 

 

漢字について

1、甲骨(こうこつ)文字:

四千年近い歴史を持つ漢字の中で、最古のものとして残っているのが甲骨文字。殷の時代、国にとって重要なことがあると、亀の甲羅や牛の骨を焼いて占った。そのひび割れで出た占いの結果は、刻して記録された。この際使われたのが、甲骨文字だ。

 

2、金文(きんぶん)文字:

甲骨文字の後、つまり殷・周から秦・漢の時代まで使われた文字。青銅器に刻されたり、鋳込まれたりした。ここでの金は、青銅器を指す。当時は、官職に任命されたり、戦功を上げたりすると、それを青銅器に記録したという。

 

3、小篆(しょうてん)文字:

金文の後に誕生したのが篆書(てんしょ)。これは小篆と大篆に分かれる。秦の始皇帝は、まちまちだった文字を統一し、標準書体を定めた。これが小篆である。

 

4、楷書(かいしょ):

南北朝から隋唐の時代にかけて標準となった書体。漢の時代まで使われた隷書から発展したもの。

 

 

 

八仙:道教の代表的な仙人。

 

 

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