(この番組は9月30日に放送された内容です。)
【新唐人2012年10月17日付ニュース】
司会者 厳真
ようこそ「中国ニュース解読」へ
こんにちは
本日は釣魚島の領土問題で発端した経済戦争についてお話しを伺います。多くのメディアに報道されたように、中国進出の日系自動車メーカーは相次ぎ減産や操業停止が余儀なくされたようです。例えば広州のトヨタは4日前からつまり9月26日から大型連休を始めました。今回の反日騒動で日系自動車が攻撃の標的にされたことから、日本車メーカーは今後先行きの不透明な中国市場を憂慮しています。また一部の中国の旅行社も「10.1」と中秋節期間中の日本ツアーを相次ぎキャンセルしているため、一部の航空業者にも影を落としました。このような経済領域に広がる反日行動は中日経済にどんな影響をもたらしますか。
時事評論家 文昭さん
経済面の反日行動は民間からの自発性もあり、すべて中共の指図だとは言えません。ナショナリズムがある程度高揚すれば、自然といろんな分野に広がっていくものです。中共当局も一連のこの行動を静観しているので、今のところ公式見解をまだ表明していません。このような行動が少なくとも日本にかける圧力となり、交渉に有利に働くからです。このいわゆる経済制裁はただ中国民衆の購買力、つまり消費者の購買力を武器にするだけです。
中日は隣国だから、中国の巨大な人口は必然的に日本商品の大きな市場になります。日本企業にとっては中国市場での損失を今すぐ他の市場収益で補填できないので、いわゆる日本製品ボイコットの影響を当然受けますし、これに伴う政治への影響も出てくるでしょう。一方 経済制裁により、中日民間の溝が深まり、日系企業が中国市場の過度依存のリスクを認識し、投資先の見直し、マーケーティング戦略の再構築を始めます。その結果は長期的かつ複雑です。
司会者
当局は日本製品ボイコットに対する公式見解を表明していませんが、この行動をいつまで容認すると思いますか。
時事評論家 文昭さん
実はこれには二つの問題があります。まず、中共はナショナリズムのボーダーラインを持っています。それはナショナリズムは中共の指導下に置かれることであって、ナショナリズムに指導権を取られてはいけないのです。ナショナリズムはあくまでも党の道具で、党に圧力をかけてはいけません。
党の常套語を借りれば、「愛国主義の統一戦線の指導権は必ず党の手によって掌握されなければならない」のです。ナショナリズムが一旦このボーダーラインを越えると、中共はすぐさまストップをかけます。これで9月18日以降、大規模な反日デモがなくなったことや暴行に加わった者が数人処罰されました。まずこれが一つ目です。
二つ目は日本製品ボイコットは経済行為ですから、当局が直接行政手段で干渉しにくい一面があります。中国は半市場経済ですから直接通達を出して、「日本製品ボイコットをしてはいけない」、「この活動に加わってはいけない」と言ったら、「デモを許さない」、「暴徒を処罰する」より遥かに立場を不利にしてしまいます。
司会者
もし中共政府が本当に通達を出して、政府や大学の職員に日本製品ボイコットに参加してはならないと言ったら、憤青(怒る若者)がすぐ怒りの矛先を政府に向けて、売国奴の政府だと怒鳴るでしょう。
時事評論家 文昭さん
これも中共政府が長年にわたって、非理性の考え方を植え付け、更に容認してきた結果です。例えば、今広がっている考え方は「中国人が3カ月日本製品を買わなければ、日本が滅びる」などです。中共がその感情を煽り立てた末、本当に参加者が増えると、今度中共が手を焼きます。中共は次の一手として2つの手段を取ると思います。外交面では、引き続き日本との接触を保ちながら民間の日本製品ボイコットをカードとして日本政府と駆け引きをします。もう一方、国内に向けて代弁者であるメディアや命令を受けて愛国している憤青、五毛党を使って世論を操作して、理性的に愛国するとか、党の指導のもとで愛国するとか、党に迷惑をかけない方法で愛国するとかを強調し、世論を誘導するとともに日本製品ボイコットはいかに愚行なのかなどと批判します。
客観的にみれば、日本製品のボイコットは確かに弊害があります。今の時代、国の間に領土紛争が起る場合、もう相手国の商品のボイコットを自分のカードとして使う国は存在しません。経済のグローバル化が進んでいる今日、すべての国々が世界経済の分業に加わって、世界経済の一環になっているからです。ここで一つの誤認を指摘したいです。
二国間で領土紛争が起きた場合は政府同士の問題です。紛争解決は政府の責務で決して消費者の責務ではありません。もし国民自身に主張や要求があれば、まず自国の政府の積極的な行動を促すべきです。いま一部の者が政府に行動を求めないまま、反対に大衆運動を呼び掛け、一般庶民に経済制裁を取るよう求めています。これで対立をさらにエスカレートさせ、増幅させ、両国一般国民の対決になってしまいました。
司会者
ここに矛盾が存在します。これらの憤青が引火されて、つまり中共に煽られて反日感情が高ぶる一方、党に迷惑、圧力をかけてはならないし、党の外交政策を批評できない遠慮から、草の根運動である日本製品ボイコットを呼び掛けます。しかし、今ご指摘のように実際紛争をエスカレートさせて、もっと大きな難題を引き起こすことになります。この難題をどう解決しますか。
時事評論家 文昭さん
この難題の解決はもう無理です。なぜなら、基本がそもそも間違っているから、当然その行動に矛盾が生じます。例えば、反日や反米のような感情がもともと自発したものではなく、あの情報が封鎖されている環境の中で、人為的に作り上げられたものです。30年前に遡れば、 1980年代には誰も反日なんか言いませんでしたよ。あの頃の中国と日本の関係は絶好調でしたから。
反日は90年代以降です。89年の天安門事件で中共が学生に発砲して、政権の正当性を失い、90年代に入ってからわざとナショナリズムを煽りたて、反日や反米の感情を醸成して、こっそりと怒りを他の国に向けるように仕掛けました。中共はこれらの国々のイデオロギーと明らかに対立しているし、反対にロシアにも及びません。だから、反日や反米の憤青がいるけど、反露の憤青はいないのです。可笑しいでしょう。近代ロシアが一番中国の国土を多く盗った国なのに。これはきわめて不合理な現象です。メディアと教育をきめ細かくコントロールして、この目的に達成したのです。
こうして愛国主義統一戦線を利用して、社会全体の考え方を統一させ、このような考えを植えつけるのです。「共産党の指導を保たなければならない」とか、「党の求めているいわゆる『安定』を守ってこそ中国が始めて台頭し、侮られなくなり、将来これらの国々に仇を討ち、恨みを晴らすことができる」とかです。一方、実際には世界経済の一体化の流れについていかなければならないから。WTOに加盟し、グローバル分業に参加し、外国資本を導入し、経済的にイデオロギーの異なる敵と相互依存の関係を保つ必要があります。一旦政治的な対立が生じた場合とても困惑します。
司会者
つまり、もつれ合うってことですね。では、具体的には日本製品ボイコットは中国に一体どんな影響を及ぼすのでしょうか。
時事評論家 文昭さん
まず、貿易を見ると、2007年から中国はすでに日本の最大の輸出先になりました。日本は中国の4番目の貿易相手です。1番目はEUで、2番目はアメリカ、3番目はASEANです。EUとASEANは地域の国々の連合体ですから、国の単位でみれば、日本はアメリカに次ぐ中国の輸出先です。今のところ日本では中国製品をボイコットする動静がまだありませんが、日本も民族感情がとても強い国ですので、もしこの対立がさらにエスカレートして、中国商品をボイコットすれば、どんな結果が生まれるでしょうか。中国の憤青は、中国の対日輸出の貿易割合が日本の対中輸出の貿易割合より少ないと思っているようです。つまり、日本がもっと中国市場に頼っているから、貿易制裁を発動すると日本の損害が大きいということです。しかし彼らはもう1つの数字を見落としました。それは輸出が国内総生産GDPに占める割合です。中国は37%で、これでも控え目に見積もった数字です。ここ数年日本は16~17%です。つまり日本の輸出は国内総生産GDPに占める割合が比較的に少ないです。内需が高く、国内市場がもっと健全ということです。つまり中国製品を使わない場合、中国製品は主に低価格の商品ですから日常用品の価格上昇をもたらすけど、まだ耐えられるものです。もし、中国の輸出が減少すれば、もともと国内市場が小さく、内需が少ないから、この部分を国内市場だけで消費しきれないので、低価格の商品を作る工場の労働者が大量に失業します。これは貿易面です。
次は投資を見ます。中国には日系企業が2万社くらいあり、主に労働集約型の企業です。例えば、ホンダの広州工場は2か所あり、従業員は約6千8百人です。広東省仏山にも部品工場があり、従業員は約2千人です。もし、報道されたように稼働率を下げて、昼と夜の2交代を昼だけにした場合、直ちに数千人が失業してしまいます。キャノン1社だけでも中国の珠海、蘇州、中山にある3つの工場の従業員は約2万人です。日系企業が撤退する場合、大勢の中国従業員が一斉に失業します。一方、中国の対日投資はとても少ないから、中国系企業が日本から撤退しても日本の就職事情に影響を与えることはありません。
司会者
ですから事実上経済制裁の場合、中国のほうがもっと弱いとお考えですね。多分憤青が掲げた横断幕に書かれたように「中国大陸に草が生えなくなったり」、「お墓だらけになったり」するでしょう。
時事評論家 文昭さん
今のところ、日系企業が損害を直接に受けています、売上が下がっているからです。長期的に見れば、1つの国が経済制裁に耐える能力は政治構造の安定性で判断します。先ほど話したように、もし、日系企業が本当に大量に撤退したら、大量の失業が発生します。そして輸出の落ち込みにより、加工業の従業員が失業した場合、彼らはその後すぐ同じ収入を得られる仕事が見つかりますか?或いは健全な失業保険制度があって、尊厳を保つための保険金をもらって、今後例えば1年間今と同じ暮らしができますか。そして田舎にいる労働者の家族が安定した収入があって、この出稼ぎ収入に頼らなくても生活ができますか。
これで一体どちらが経済戦争で社会不安、政治不安を引き起こしやすいのかがわかれば、どちらが経済戦争を恐れているかの答えも見えてきます。
司会者
ナショナリズムとは両刃の剣であり、多刃の剣でもありますね。中共自身も結局その剣に切られてしまいますね。しかし、これは自ら招いた結果です。国内の庶民は中共に搾取されているから、一旦このような国際紛争や経済対抗が起きると、先ほども言及したように社会保障制度も完備されていないため、結果的に中共に怒りの矛先を向けます。この圧力によって中共はまた外国に弱腰になり妥協せざるをえません。丁度「蚕繭の自縛」という言葉がぴったりです。
ありがとうございました。
(翻訳/中山 編集/坂本 映像編集/工)