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「東シナ海防空識別圏」騒動を読み解く

2013年12月08日

「東シナ海防空識別圏」騒動を読み解く

 

司会 

中国ニュース解読へようこそ。文昭さん、こんにちは。

 

文昭さん

こんにちは。

 

司会

今週最も熱い話題はやはり東シナ海防空識別圏についてですね。11月23日、中共国防省が東シナ海防空識別圏の設定を公表しました。この空域を飛行する航空機は4種類の識別方法を提供するとともに、防空識別圏の管理機関及び委託機構の指揮命令に従うことが求められました。しかし、設定した識別圏は尖閣諸島も含まれている上、日本、韓国、台湾の識別圏と重なっていることから、周辺の国々の強い反発を招きました。さらに11月25日、米国のB52爆撃機2機がその識別圏を飛行しましたが、中共は軍事行動を起しませんでした。この一連の騒動の中で、中共はどんな立場にあると思いますか。

 

文昭さん 

中共の今の立場は受動的で、ばつが悪いです。でも、なんとか自分の体面を保とうとしています。米国のB52爆撃機2機が東シナ海防空識別圏を飛行したことは、米国が口先だけでなく実際の行動で、中共が一方的に設定した東シナ海防空識別圏を容認しない態度を表明しました。中共が口だけで手を出さないのに対し、米国は口も手も出しました。この行動は明らかにアジアの同盟国に手本を示しました。米国のアクションがあまりにも早かったのでしょう。中共は驚きのあまりただ呆然とするばかりでした。1日経ってから 国防部がようやく声明を発表しましたが、この声明でも言葉のあやを使って面目を保とうとしています。

 

例えば CNNは27日、米国のB52が防空識別圏を通過した。「through  the air zone」と報じました。ウォールストリートジャーナルとフランス通信社も同じような言い方でしたが、中共国防省は何と言ったのでしょう。まず、外国の報道を否定していません。米軍機が防空識別圏を飛行した事実を否定しなかったのです。次に「監視した結果、米軍機が尖閣諸島の東側200キロのエリアを移動した」と言いました。この距離から見れば、米軍機が防空識別圏の外側にいるかのようです。米軍機が東シナ海防空識別圏に入っていないと暗示しながらも、軍が全飛行ルートの監視と識別を行ったと発表しました。相手が防空識別圏に入っていないのにどうして識別する必要がありますか。短い言葉に数カ所も矛盾するところがあります。

 

11月29日 中共空軍が「10数機の米日軍用機の識別監視に成功した」と発表しましたが、米日側はこの識別圏での飛行中妨害を受けていなかったと否定しました。つまり、中共の取った行動は識別圏の有無に関わらず全く同じでした。国内の批判が高まる中で自分の体面を保とうしているばかりです。

 

司会 

多くのネットユーザーも中共が自ら失態を招いたと見ています。まさにうまくやろうとして逆に悪い結果を招いてしまいました。この時期に、中共がいきなり東シナ海防空識別圏を設定する目的は一体何でしょうか?

 

文昭さん

中共が東シナ海防空識別圏を設定した目的は主に2つあると思います。まず、政治的に国際法的に尖閣諸島紛争をめぐって得点を上げることです。この識別圏の設定により、通過する他国の軍用機も民間機も通告する必要があるため、この地域の管轄権を他国に認めさせ、既成事実を作ります。次に、日本の識別圏と重なることから、故意に摩擦の種を蒔きました。つまり、今後双方の飛行機がこのエリアをパトロールする時、摩擦、衝突の確率が高まります。パイロットのヒューマンミスやシチュエーションによって、摩擦が引き起こされる緊張が高まるので、このような軍事的な衝突や摩擦、パイロットのミスによる摩擦を避けるため、話し合ってルールを作って、互いに安全な距離を取って摩擦を避ける必要があると認められ、違う形で日米に交渉を逼ることになります。この理由として、東シナ海防空識別圏設定を発表した直後、中国国防大学の戦略研究者・孟祥清教授が次の発言をしました。「(他国と)重なっているエリアでは、互いに情報を交換し、緊密にコミュニケーションをとる。そして協議する上、一定のルールを作って、共同管理し、摩擦を避ける」。このことから、交渉を逼る事が主な目的だと思います。日米に事実上このエリアに管轄権があることを認めさせ、肩を並べて交渉することを狙っています。

 

司会

今の解析によりますと、米国と日本に交渉を逼ろうとしても有利な立場を狙おうとしても、明らかに目的が達成していないようですね。今度の米国の予想外の行動は、明確に中共に王手をかけたと思います。中共は当初、他国の反発を予想していなかったでしょうか。

 

文昭さん

米国の迅速かつ断固とした対処は、中共の予想を超えたのでしょう。一定期間内にその目的達成の見通しが立たなくなりました。どうして中共がこのような判断ミスを犯したかと言いますと、この東シナ海防空識別圏を設定した主役は軍の側だと思います。しかし、軍の側は非常に外交経験に乏しいのです。軍の鷹派は傲慢な上、無知です。国際情勢と主な仮想敵である米国について、基本的な判断能力が不足しています。軍の鷹派の発言を読むと、「米国に圧力をかければ、東アジアで摩擦に巻き込まれたくない米国は、日本に圧力をかけ交渉を逼るだろう」と判断していることが分ります。現実として、設定した東シナ海防空識別圏は韓国、日本、台湾の識別圏と重なっているし、自分が隣国に強硬な措置を取る力を持っていないのに 、必要以上に激しい剣幕を見せて、隣国を怒らせて外交的孤立に陥ってしまいました。軍は今、米国の主要な外交圧力が何なのかを全く理解していません。米国の主要な圧力は、東アジアの同盟国に安全保障を提供し、同盟国に安全感を与えることで、中共に妥協することではありません。明らかに非常に低レベルの誤認をしてしまいました。

 

司会 

ネット上には別の見解もあります。米国や日本が防空識別圏を設定しているのに、どうして中国が設定したら、地域のバランスを崩し、安定を脅かすことになりますか。これについて何かご見解をどうぞ。

 

文昭さん

防空識別圏の設定はとても容易いことで、地図にそのエリアを描いて、声明を出せば済むことです。問題はこの設定を実行に移すことができるかどうかです。特に隣国次第、つまり、隣国の歩み寄りや協調次第です。

 

例えば、北米防空識別圏は冷戦時代の1950年に設定されました。この防空識別圏はとても広くて、カナダも含まれています。カナダは米国の同盟国ですからこの設定からメリットを得ています。米国がカナダの遠距離防空識別の責任を担うことになるので、カナダは当然納得する上、同盟国の間で摩擦も起きません。それから日本の防空識別圏。そのエリアも非常に広いし、冷戦時代に設定されたものです。日本、台湾、韓国は全部米国の同盟国だからこそ、異議を唱えません。一方、中国とソ連は冷戦時期にはきっぱり敵国でした。識別圏の有無を問わず敵国だったので、地域情勢に影響を与えませんでした。

 

しかし、今日の情勢は日本、台湾、韓国は中国本土にとって、簡単に敵かそれとも友かを一括することができない、敵か友かに成りうる関係にあります。潜在的なライバル意識と不信感が存在しているから、この時期に一方的に防空識別圏を設定し、もっと主な理由として領土紛争エリアを含めたことから、あっから様に激しい剣幕、横行な態度を見せています。周辺の隣人を侵害する目的ですから、当然隣人たちは反発し、気に食わなくなります。気に食わない態度を表明するには、今までのように振る舞いをします。まさに糠に釘です。実利がない上、人の不満を買ってしまいます。他人を損ねて、自分の利益にもなりません。

 

司会

数週間前のこの番組で、尖閣諸島をめぐって、中共の(話し合いによって)交渉できる余地がますますなくなると話しましたね。今回の防空識別圏の騒動を起してから、今後の情勢はどうなっていくのでしょうか。

 

文昭さん

今現在、今後暫くの間は、前回の判断を超えることはないと思います。ただ、中共の愚かな反応ぶりは私の予想外でした。前回の番組では中共がもっと軍事演習を増やして実力を誇示するか、空母のお披露目の機会を増やして威厳を見せるかと予想していました。予想通り、あの空母がお披露目に出かけました。東シナ海防空識別圏の設定にあたり、中共は口を使って手を出していません。尖閣諸島海域で実際な行動で摩擦を引き起こしてはいないものの、その影響はもっと悪くて大きいです。つまり、口が災いの元になったのです。

 

今、米国と日本が中共の企みを見抜いただけでなく、多くの中国のネットユーザーも次々と現れる一連の中共の口先のごまかしに飽き飽きしています。米国と日本がボーダーラインを動かさなければ、中共が前へ進むほど交渉の余地がなくなります。一層のこと、中共が直接このボーダーラインに挑発し、武力で尖閣諸島を奪って、地域戦争を引き起こさない限り、中共は譲歩するしかありません。

 

司会

米国の爆撃機が防空識別圏を通過したことに対する中共の反応を見れば、中共があえてこのボーダーラインに挑発することはなさそうです。中国の民衆は中共の軍隊に「グース・ステップ」(がちょうの歩調)と「布団畳み」の能しかないと知っています。中共の上層部はネットユーザーのアドバイスを取り入れて、羅元や張召忠のような将校を前線に派遣して、彼らの口で米国の飛行機を打ち落としてほしいですね。

 

ありがとうございました。

 

http://www.ntdtv.com/xtr/gb/2013/12/02/a1015735.html

(翻訳/中山 映像編集/工)

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