【新唐人日本2011年6月16日付ニュース】司会者:「皆様こんにちは。2009年10月1日は、共産党政権樹立60周年でした。これに対し中国メディアは、“偉大”“輝かしい”“驚愕の功績”と称賛。
しかし多くの中国人にとって、60年の歴史はそれらの言葉とは、かけ離れたものであり。この半世紀以上の日々、希望や喜びもあったでしょうが、決して癒やされない傷も負ってきました。
今日の中国人には、重くのしかかる生活負担のほか、困惑と失望もあります。これらは一体なぜなのでしょうか。歴史の輪廻が、起点に戻ったのでしょうか。
複雑な二面性を持つ中国の行く末とは?
これらの問題に答えるため、“世事関心”はシリーズ番組――“二面性を持つ中国はどこへ”を制作、これはシリーズでお伝えしますが、本日は“起因”をご覧ください」
こちらは、北京のアメリカ大使館です。大使館の前では、毎日、ビザの手続きに来る人の長蛇の列が見られます。アメリカへ自費留学する場合、全額奨学金のケースを除き、国外よりも国内の親戚に保証人になってもらうほうが、ビザを取りやすいそうです。中国には資産家がいることをビザ担当官も知っているからです。
ビザ担当官だけでなく、世界もこの点を目にしています。
ニュージーランドの車のディーラーによると、中国人の若者はほとんど現金で車を買うそうです。
ニューヨークから来た人は、上海の高層ビルを見て、ショックを受けるかもしれません。
日本も消費の主役の座を、中国の観光客に譲りました。
欧米メディアは、中国の目覚しい経済成長を熱く語り、その傍らに建設ラッシュの写真を添えています。中国国内でも、相当の数の都市住民が過去数十年で、生活レベルがぐんと上がったと感じています。
これらに加え、メディアの喧伝によって、中国人の脳裏には「繁栄する中国」の姿が焼き付けられました。
しかしその一方、アメリカ大使館の前の列が途切れることはありません。ここからお分かりのように、中国のエリート層は、長らく外国志向でした。留学、定住、投資、子女の移民。彼らの目的の多くは、海外で住まい、あるいは次のステップとなる場所を見つけることです。
このほか、出国の目的が勉学であっても、具体的な計画を持たない人もいます。ただし、海外留学によって、自分の未来の選択肢が広がることは間違いありません。
ではここで、時空を超えてみましょう。
1300年前の中国もまた、栄華を極めていました。永遠にあせることのない、唐の時代です。
当時の長安は世界最大の都市で、世界各地の留学生が集まっていました。
人口約百万人を誇り、常に各国の商人と留学生が数千人に達していた長安。ムハンマドは弟子に、“学ぶなら、中国へ行きなさい”と述べています。
面白いのは、唐の時代の資料には遣唐使や留学生、外国の使節などの言葉があふれる一方、当時、中国から海外に留学したり、定住したりといった記述はほとんどありません。つまり、栄華を誇った唐がオーラを放ちつつ、広い懐で各国を受け入れ、まばゆい光で世界を照らしていたのでしょう。
現代と唐の時代を比べると、極めて大きな違いがあります。それは“自信”です。唐の時代の人は自信に満ちあふれていたのです。一介の書生でさえ、向上心がみなぎっていました。しかし残念ながら、そのような栄華は2度と戻ってこないのかもしれません。
今日の中国人は、将来に自信が持てないようです。お金があったとしても、不安をぬぐえません。ここには、繁栄と崩壊がほぼ同時に存在しているからです。そこで、中国の現状と前途は、世界最大の謎ともなっています。
では、次の数字を見てみましょう。
当局の発表によると、2006年中国の都市住民の平均手取り年収は79年の29倍、農村住民の実収入も79年の24倍にまで増加。
この時期、国内総生産つまりGDPは、51倍増えました。
つまり経済成長のスピードと比べれば、中国人の収入増加は追いついていないうえ、物価の高騰も激しかったので、庶民の生活レベルの向上には限りがありました。しかも、当局の発表する数字には、よく水増しがあります。それでも、数十年貧しさに慣れていた中国人にとって、これらは驚きの数字なのです。
中国人の生活は、この数十年で驚くべき近代化を遂げます。例えば三種の神器。数十年前は自転車、ミシン、時計。その後、洗濯機、テレビ、冷蔵庫となり、さらには株、不動産、自動車へと大きく変わりました。→撮り直し
時間軸だけをみるならば、この発展のスピードは確かに、並大抵ではありません。
著しい経済成長により、中国は国際社会での存在感を高めていきます。世界経済や政治への影響力も増し、国際的な地位も向上。アジアの発展途上国から、世界の熱い視線を浴びる国になりました。
しかし中国は、「栄華」を誇る一方、すでに大きな危機に直面し始めています。90年代、ほとんどの国民が経済改革の恩恵をあずかった状況に、変化が生じたのです。しかもこの変化は、より速くより激しくなりました。そこで、統計の数字から“平均”の2文字を取った場合、全く違う光景が目の前に現れてきます。
フランスのITサービス企業、キャップジェミニが発表した「2008年アジア太平洋資産報告書」によると、2007年末までで、100万ドル以上の資産を持つ富豪が中国には合わせて41万5千人おり、前年よりも20.3%増加。これらの資産家の富を合わせると、2兆ドル、日本円では約170兆円を超えます。2007年のGDPの6割に相当し、2007年の中国の財政収入の3倍近く。一方、この資産家は人口の0.0003%に過ぎません。
中国の都市住民と農民の収入格差は、すでに世界でトップとなりました。中国の農村には、生活に困っている人が3000万人もいます。そのため、きらびやかな北京を100キロ離れれば、驚きの格差が目に飛び込んできます。北京の高級ホテルの、一晩8万元の大統領用スウィートルームに、客足が途絶えない中、100キロ離れた河北省には、まともな布団すらない家庭すら存在するのです。
貧富の二極化はすでに、現代中国の大きな特徴になりましたが、中国の「繁栄」のイメージを崩すのは、これだけではありません。
中国の生態環境は、すでに崩壊のふちに達しています。中国の主な水系のうち、すでに5分の2は水の機能を喪失。3億人余りの農民は、安全な水を飲めません。
世界の汚染都市ワースト10のうち、中国は5つを占めます。
4億人以上の都市住民が、汚染された空気を吸っており、結果、1500万人が喘息やがんになりました。
水と土の流出も深刻で、目下、水と土の流出面積は国土の38%を占め、90%以上の牧草地が後退し、4億人近い人口の耕地と住まいが砂漠化の危機に直面しています。
中国当局も、近い将来、中国人1億5千万人が生態難民になると認めています。
21世紀に入ると、世界は中国製品であふれ返るようになりました。しかし、中国の失業率は世界でも最悪のレベルで、20%以上に達します。
90年代後半からは、“新たな3つの大山”という言葉すら出現。中国人にのしかかる大きな負担、つまり住宅、教育、そして医療です。例えば、7割以上の市民が家を買えません。
住宅問題への庶民の怒りは、すでに限界に達しています。北京、上海、広州、深センなどでは、新婚夫婦の間で、“6人で家1軒を買う”のが流行りです。家を買うとしても、頭金は双方の両親の“老後の貯蓄”に頼り、夫婦は毎月のローンしか払いません。
かつて中国の誇りだった巨額の外貨準備高ですが、今ではインフレの元凶として、厄介者となっています。1兆ドルの外貨準備高を積み上げるために、中央銀行は8倍額に相当する人民元を発行して購入。しかしこの8兆ドル相当の人民元は、商業銀行を経る過程でどんどん増えていき、これら大量の資金が怒涛のごとく、中国経済システムへと流れ込み、インフレ圧力を強め、結果、中国には2006年から深刻なインフレが発生します。
不動産、水道、電気、ガスなどが続々と値上がりし、労働者の給料がどれほど上がっても、これらの値上がりには追いつきません。仕事があってもこれですから、失業者や生活の保証のない農民は、生活のレベルがほぼ毎日下がることになります。
中国の官僚は、世界で最もうま味のある公務員です。毎年、公費による飲み食いや公用車、海外訪問など合わせると日本円で8兆6千億円。一方、教育への投資は世界的に見ても極めて少なく、毎年、GDPのわずか4%で、アフリカのウガンダよりも低いのです。
中国は、高級住宅やぜいたく品、高級クラブがすさまじく発展する一方で、その光が当たらないところには、リストラ者、貧しい農民、強制立ち退きや不公平な司法の被害者などが大勢います。
彼らの心に潜む無念と怒りは、いつ爆発してもおかしくありません。
1993年から2003年までで、中国では“集団抗議事件”の数が、毎年1万件から6万件に増え、関与した人も73万人から307万人にまで増加。2004年は7万4千件だったのが、2007年には9万件を超えました。
この30年、物質的な暮らしの変化のほか、中国社会に大きな衝撃をあたえたのが、信仰の消滅でした。
中国政府は、共産主義独特の言い回しを好んで使うものの、総書記から農民まで、実はもう誰も共産主義を信じてはいません。同時に、中国伝統の信仰は共産党の圧政下で、ほぼ消滅しました。信仰が消え、精神の向かうべき方向を見失った後、金儲け主義の風潮が中国を支配することになります。
2007年、中国製の毒入りペット食品と鉛を含んだ玩具が発見され、世界に衝撃を与えました。
1年後、メラミン入り毒ミルク事件により、中国食品への信頼は地に落ちました。最も気の毒なのは、幼くしてこの世を去っていったメラミン被害にあった赤ちゃんです。
誠実と信頼の喪失、道徳の堕落は社会を丸ごとのみ込みました。中国人の「性」への考え方も、すさまじい変化を遂げています。「性」は一種の娯楽となり、伝統的な家庭の概念が覆されたのです。
一晩限りの関係、愛人などが高官から庶民にいたるまで、社会の流行になりました。道徳観の退廃によって、体を売る女性が増え続けています。
北京師範大学の金融研究センターの調べでは、目下、中国で売春をする女性は500万人。もし売春女性1人当たり、3人がサポートするとすれば、中国では性産業に関わる人は2千万人、中国経済への直接あるいは間接的な貢献はGDPの12%強に当たります。
これらに加えて、15億近い人口も抱える中国。人々が生きていくための需要、生態系への負担、危険な生存状態などが絡まりあって、巨大で不気味なエネルギーへと生まれ変わります。
中国の複雑極まりない二面性に対し、中国の新たな指導者は、巧妙な言い方で中国の国情と共産党の指導を表現。温家宝首相の言葉を引用しましょう。“中国共産党の指導による改革で、大きな功績を収めた。我々はいまだかつてない試練に直面しているが、前途は明るい”
一方で、中国の改革開放を指揮した鄧小平氏は、かつてこんな意味深長なことを述べています。“もし我々の政策で二極分化が進むなら、それは失敗なのだ”
普通に理解すれば、もし貧富の格差が政策ミスのため、無意識で起こったのであれば、その政策を正せばよいのです。ではなぜ、全体の失敗にまでいたってしまったのでしょうか。
貧富の格差など、今の中国の多くの問題は、改革の過程なのか、それとも改革の結果なのか。無意識による、政策の部分的なミスなのか、それとも中国の改革モデルの必然の産物なのか。
根本原因は何なのでしょうか。中国の発展過程には、始終、調和不可能な矛盾がまとわりつきます。だから、矛盾を解決しても、また新たな矛盾が生まれるのです。
何かを守るには、何かを犠牲にする。ある目的のためには、何かに譲歩する。何かを隠すには、圧制の道しかない。国と民族の長期的な発展にとって、このモデルが意味することとは?
2500年前、古代ギリシャの哲学者、プラトンは、後世に多大な影響を与える本を記しました。それが“国家”です。対話の形で、理想の国のさまざまな面を論じています。さらに掘り下げると、理想の国の姿を通じて“公の正義とは何か”を証明するのが狙いでした。
最後、真の公の正義とは、完全な公の正義であるべきだと結論付けました。自分の公正と正義は、相手にとっても公正と正義である、つまり、あらゆる人にとっての公正と正義だというのです。
この公の正義は、国の日常の営みに現れてきます。例えば仕事。誰しも自分のやるべきことをやり、こなすべき職責をこなす。これらが合わさり1つの理想の国、つまり最高の状態になります。公正な正義が一切の基礎であり、真の完璧な正義があって、理想の国が造られるのです。
1990年代、中国である論争が起こりました。そのテーマはプラトンが2500年前に提唱した“公の正義”についてと似ています。
すなわち、公平と効率のどちらを優先するべきなのか。しばらく論争がありましたが、その後、中国の改革開放を指揮した鄧小平は“効率が優先だ。効率のためなら、公平を一時的に犠牲にしてもかまわない”と発言。→撮り直し
そして、“一部の人を先に豊かにさせる”などの国策が打ち出されました。興味深いのは、同じように理想の国を追求しながら、共産党とプラトンは全く逆の選択をしたことです。共産党は効率のため、公平を犠牲にしましたが、プラトンは「理想の国を造るには、真の公平と正義がなくてはならない」と結論付けました。
どちらが正しいのでしょうか。
もしかしたら、どちらも正しいのかもしれません。ただプラトンの言葉は、この世の根本的な道理だといえます。共産党が選んだのは、危機が迫ったとき、すばやく逃(のが)れるための近道です。しかし中国の悲哀は、何度となくこの“近道”を選ばざるをえなかったことです。この過程で共産党は、他の道を歩む力を徐々に失っていきました。
ただ、それでもこの“近道”は希望をもたらしました。よって、今日の人々はこの希望と崩壊という迷いの中にいるのです。中国の前途はどこなのか、見えません。
ならば、もっと優れた経済モデルや魅力的な理論、あるいは庶民への実質的な約束を念頭に入れて、中国の行く末を改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか。
あるいは、今、真に必要なのはこれまで気に留めてもこなかった最も基本的な哲学的思考かもしれません。今日までの栄光盛衰の歴史は、その思考こそ一切の世事の根本的な道理であり、源でもあることを証明してきたからです。
では、中国を見てみましょう。過去30年、13億の中国人が歩んできた命の軌跡。これを描き出すと、自然とある道が浮かび上がってきます。公の正義が道の真ん中に構えている、そのような道です。それは我々がずっと渇望してきた道であり、その道は過去から、さらには未来へとつながっていきます。
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