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小児の発熱―漢方は急性の病気にも使える?

2010年03月01日

今回林先生が紹介するのは、ある子供の逸話。この子は突然汽車の中で、高熱になる。しかも痙攣(けいれん)を伴う、かなり深刻な発作であった。そこで、汽車の車掌はあわててアナウンスを流した。「この汽車に、お医者さまはいらっしゃいませんか?」 

ちょうどその汽車に乗り合わせていた西洋医は、急ぎ現場に駆けつけた。しかし、そこには救命用の薬も道具もない。西洋医がなすすべもなく困り果てていると、ある冴えない老人がやって来た。するとこの老人は、その子の前腕をさすり始めた。そしてしばらく続けていると……。妙なことに、この子の痙攣(けいれん)はピタッと止まったのである。 
 
西洋医でさえお手上げだった子供の発作。この冴えない老人は、一体何をしたのであろうか? 
 
実は、前腕の内側の手首から肘までを「天河水(てんかすい)」と呼ぶ。この老人は天河水を繰り返しさすったのだ。この天河水、発熱などの風邪の症状を和らげるのに良い、という。 
 
ところで、漢方の原則は「病気の源を見つけ、それを取り除く」。しかし、今回は原因を調べることもなく、ただ症状を見ただけで対処した。これは何よりも、子供の病気は単純であり、大人ほど複雑ではない。というのも、子供には七情がないからである。つまり、喜怒哀楽悲恐驚といった感情に惑わされることが少ないのだ。 
 
『黄帝内経』には、こんな一説がある。
「恬淡(ていたん)にして虚無なら、真気はこれに従う。
精神を内守すれば、なぜ病気になることがあろうか?」 
 
つまり、喜怒哀楽悲恐驚に執着せず、常に穏やかな心を保つ。司会者が提案してくれたように、これこそ健康の秘訣なのかもしれない。

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