【新唐人2010年6月25日付ニュース】中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は19日、「人民元の弾力性を高める」と発表。国際社会は、これを人民元切り上げのサインととらえ、歓迎しています。しかし一方で、「これはG20を前にしたポーズに過ぎない」あるいは「人民元切り下げもあり得る」という声すらあります。
6月19日、中国人民銀行は為替改革を発表。国際社会は「この決定はバランスの取れた世界経済の発展に役立つ」と歓迎しました。
アメリカのオバマ大統領は、「世界経済の復活に役立つ」と評価し、EU(欧州連合)も、「バランスの取れた世界経済の発展に有利だ」と述べました。
国際通貨基金(IMF)の代表、ドミニク・ストロス・カーン氏も、「これで中国人の収入が増えれば、中国の消費者向けの市場が大きく発展するだろう」と歓迎しました。
しかしアメリカの強硬派議員、シューマー氏は、中国の行動はあいまいで限定的だと非難したほか、「中国は人民元切り上げを促す法律を定めないだろう」と漏らしました。
アメリカはこれまで、中国は輸出に有利なように人民元を低く抑えてきたと批判。中間選挙があと半年に迫り、人民元問題が再び焦点となっています。
これについて、専門家はこう指摘します。
評論家 草庵居士 希望の声・国際ラジオ局の取材
「中国が人民元問題を解決しないなら、米国は制裁を課すでしょう。高関税など。ただ中国も失業者増加など、経済にとって打撃なので激しく駆け引きしています」
アメリカのガイトナー財務長官は、10日「中国が人民元問題で動かないなら、懲罰的な関税などの措置をとる」と警告。これに対し、アメリカ経済界のトップは、「それではアメリカ自身の利益も失う」と返しました。
一方、中国当局は「人民元問題は、金融危機や貿易不均衡の原因ではない。失業問題など、アメリカ国内の問題も、切り上げでは解決できない」と反発します。
一方、IMFの経済顧問、ブランチャード(Blanchard)氏は、切り上げは中国の利益にかなうと述べます。同時に、アメリカは大幅に赤字を減らすべきだ、と警告します。
20日、中国人民銀行は人民元の固定相場を自画自賛しました。特に、金融危機で多くの通貨の相場が下がった中、人民元は安定していたので、世界経済の復活に大きく貢献したというのです。
さらに「人民元の相場は、大きく上下することはない」とも強調。自国の通貨を複数の外貨に連動させる、通貨バスケット制を参考にすると述べます。
2005年の為替改革以降、ドルに対する人民元の相場は21%上昇。それから世界金融危機が起こった2008年まで、人民元相場はほぼ、ずっと固定されてきました。
そして先月の米中戦略・経済対話で、胡錦濤国家主席は「自らが決定権を持つ条件で、着実に為替改革を行っていく」と述べました。
別の専門家は、「人民元が通貨バスケット制を採用したら、相場の上昇と下落、どちらもありうるが、もし今年中に3~5%人民元が上がれば、輸出企業にとって800万の雇用の損失だ」と指摘します。
アメリカの不動産バブルの崩壊を予測していたニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ(Nouriel Roubini )教授は、「人民元がドルから切り離されたからといって、人民元相場が上がるとは限らず、逆に下がるかもしれない」と述べます。
また、別の専門家は「大幅な人民元切り上げは中国経済に対し、特に製造業にとって大きな衝撃になるだろう」と指摘しました。
彼は、日本を例に挙げます。85年のプラザ合意で円高を受け入れてから、95年のバブル崩壊まで、10年も日本経済が停滞したと指摘。中国もその二の舞になるのでは、と案じます。
為替改革の発表後、中国のネットでは「これは外圧に屈した行為で、最終的に中国の大事な輸出部門を損なう」という批判が出ました。
しかし、こんな指摘もあります。
経済学者 何清漣
「より弾力的な人民元相場は中国経済の転換に有利。つまり、輸出から消費への転換。長期的なインフレの抑制。中国経済の均衡あるものにし、資産バブルを防ぎます」
一方ロイター社は、人民元切り上げで中国でのコストが上がれば、外資の投資は減る、と予測します。
国内外を問わず専門家が口をそろえるのは、「人民元相場の調整は中国の産業構造を調整して、経済モデルを変えるのに欠かせない」という点です。
新唐人記者がお送りしました。