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甘粛土石流から中国を斬る―さらなるリスクが潜む三峡ダム

2010年08月24日

【新唐人2010年8月25日付ニュース】8月8日の深夜、突如、大規模な土石流が中国北西部の甘粛省を襲い、大きな犠牲が出ました。当局によると13日までで、死者は1434名、行方不明者は331名。しかし現場の被災者は、死者はもっと多いはずだと証言します。

これについて、ドイツ在住の水利専門家、王維洛(おういらく)さんは「人為的な要素が土石流を招いた」と指摘します。例えば、野放図な森林伐採や鉱山の採掘・ダム建設。しかし、政府はこれらを深く追及しないので、いつも誤った結論を出すのだといいます。ただし、このような地質災害は、実は三峡地区の方がもっと深刻だと王さんは述べました。
 
甘粛省・舟曲(ドゥクチュ)県は一夜にして、廃墟と化しました。政府は土石流の原因について、自然の要素を強調しています。しかし、数百年もこのような災難がなかったのに、なぜ今回突然起こったのでしょうか。
 
水利専門家の王維洛(おういらく)さんは、「もし過度な開発がなければ、これほどの土石流は起こりえない」と述べます。
 
この地域は昔から、自然に恵まれ、災害の少ない良いところでした。特に1950年代は、大体どこも森林で覆われていました。でも、この50数年というもの、国に大量の木材を提供するために、多くの木が切られ、広大な森林が破壊されました。
 
この結果今では、この地域の周りの山には、ほとんど森林が見られなくなりました。しかし実は、当局は「森林」という言葉の定義を変えたんです。森林密度の定義を0.4から0.2に下げました。だから、いわゆる「森林」はこの地域にも少なからずあります。しかしながら、これらの「森林」にはすでに、森林としての生態環境や保水機能などがありません。
 
例を挙げましょう。もし、この地域が以前のように森林が豊かだったら、90ミリの大雨や
豪雨でも土石流は起こらなかったはずです。というのは激しい雨はまず、木の葉っぱに当たります。それから地面の落ち葉に吸収されてからゆっくり、ゆっくりと土壌に入っていきます。このように、雨は激しく土壌を直撃することはないので、森林が豊かなら土石流は起こりえません。がけ崩れも起こりません。
 
しかも木は土壌に、根を張り巡らせるので丈夫になります。だから土石流は起こらないはずです。つまり森林破壊が原因の1つです。
 
2つ目の原因は、過度な採掘です。この舟曲県は実は、鉱物資源が非常に豊富です。例えば、金や玉などです。この数年来、中央政府が提唱した「西部大開発」の名の下に、地方政府は大規模な鉱山の開発を進めています。これが2つ目の原因です。
 
3つ目の原因は、最近十数年中国で盛んな水力発電所の建設です。今回の被災地、舟曲県だけでも、建設中のものも合わせると47に上ります。47の水力発電所です。隴南市になると、150もの水力発電所を建てる予定だそうです。水力発電所というのは、ダムを建設し、水道を掘り、水を引いて発電をする、こういったものを指します。
 
しかしこの際、大量の岩を削って土を掘り出します。掘り出した大量の土は、場所を見つけて山積みにしておきますが、もし一旦激しい雨が降れば、これは一気に崩れ落ち、土石流を招く恐れがあります。
 
また、水力発電所自体にもリスクはあります。例えば、水位が高くなった場合、もともと傾斜していた地層に、水が浸透していきます。するとこの地層の表面の摩擦力が小さくなります。摩擦力が小さくなると、地層がずれ動きやすくなります。水位がそれほど高くなければ、安定していますが、一旦水位が上がると摩擦力が下がるので、地層がずれ動きます。地層ごとずれて崩れ落ちると、深刻な土石流が起こります。
 
では、なぜ多くの水力発電所を建設するのでしょうか。何よりも経済発展のためですが、そのために自然が犠牲になっていると王さんは述べます。
 
被災地の舟曲県における水力発電所の建設は、中央政府の立てた計画ではありません。しかし、中央政府はこの地域での開発を許可しています。だから、地方政府は建設業者を誘致し、開発を盛んに行いました。ここではもちろん、大量のお金がうごめきます。中国では建設事業こそ、腐敗の温床です。日本も同じですが建設事業はうまみの多い事業だからこそ、官僚や業者などがこの種の工事に飛びつくのです。上から下まで、誰もがこの暴利を得られる事業にありつこうと、躍起になって飛びつきます。
 
しかし彼らは工事を行う時、ほとんど生態環境に考慮することはありません。もし生態環境への影響を真面目に考えたら、この投資は全く割に合わないことに気付きます。
 
彼らの目的は他でもない、「カネ」です。今の中国ではみんな、「カネ」儲けの話になると目の色を変えます。だからこのような野放図な開発がまかり通っているのです。
 
王さんはこのほか、都市計画の失敗が今回の大災難を招いたと強調します。全体の地形を見ると、舟曲県の南北には、がけ崩れのあった場所が横たわっています。ここに、学校や病院・住宅地を建設したのは全くの誤りだったと指摘しました。
 
この地域に都市を建設したこと自体、全くの間違いでした。とてつもない誤りです。では、ドイツを例に挙げましょう。ドイツでは山の方に行っても、高層建築を見ることなどありません。建物があったとしてもどれも小さいものばかりで、山の斜面に寄り添うように建てられています。日本でも平屋や一戸建てばかりです。
 
しかし、中国は山間地であっても大都市を真似したがります。上海などの大都市ですね。つまり高い住宅マンション、しかもとても大きな建物を建てます。その上、川のすぐそばに建設します。
 
川岸の美しい景色を作り、最大限に土地を利用するため、地元の川岸には多くの高層建築が建てられました。しかし、川の水が急に増えた時、コンクリートの護岸だと水が吸収されないので逃げ道がなく、水害が起こります。
 
実は、今回の災害の主な原因は、人が水とこの空間を奪い合ったからです。人と水との空間の奪い合いです。しかしこんなことを続けていけば、最後には衝突が起こります。衝突の結果起こること、それは今回のような災害です。今回の土石流は衝突の結果なのです。
 
もし、自然に打ち勝つという考え方を捨てなければ、つまりいつまでも自然との戦いを続けていくのならば、悲惨な結果を招くと思います。自然のものを奪い取る考えは捨てるべきです。ただ今の政府はそれができません。だからこそ、舟曲県のように、あれほど狭いところに都市を建設し、多くの人を住まわせたのでしょう。だから、この災難は人為的な誤りが招いたといえると私は思います。
 
舟曲県のような過度な開発は、中国各地で見られますが、王さんによると三峡ダムの地域はもっと深刻だそうです。
 
長江中流にある三峡ダムの地域は、長い目で見れば、おそらく今回の被災地よりももっと深刻です。例えば、三峡ダムの周辺にある地域のうち、少なくとも3つの県はがけ崩れの危険があります。この3つの県はすべて……長江に流れ込んでしまうような大規模ながけ崩れの危険があります。
 
三峡ダムの地域は、昔からごく小さな地震が良く起こっていました。でも三峡ダムの運用が始まって以来、小さな地震の数が格段に増えました。このような地震が重なれば、山の地層が不安定になりますが、このリスクは四川大地震をはるかに超えます。
 
これは「ふるい」と同じです。しょっちゅう振動があれば、地盤は緩んできます。しかも三峡地域の豪雨は、甘粛省より激しいのです。今回のような大災害が三峡ダムの流域でも起こるのか……このような条件がそろっていますから、遅かれ早かれ災害が起こると思います。
 
このほか、王さんは舟曲県の被災者からの情報として、川の上流の2つのダムが決壊したと述べました。たった90ミリの雨で、あれほどの土石流が起こったことを考えると、これは大いにありえます。
 
新唐人記者がお送りしました。
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