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【中国ニュース解読】北朝鮮と中国の「粛清」を読み解く

2013年12月20日

司会 

中国ニュース解読へようこそ。文昭さん、こんにちは。

 

文昭

こんにちは。

 

司会

今週 中国と北朝鮮2つの共産国家から、上層部の権力闘争のビッグニュースが伝わってきました。9日、北朝鮮中央通信社がナンバー2の張成沢が、党政治局拡大会議で逮捕される写真を公表しました。その後 北朝鮮の官営メディアが一斉に張成沢を非難し、7つの罪状を列挙しました。中国では周永康の逮捕劇ですね。ロータス社は11日に情報筋の話しとして、周永康の身柄が拘束されたことが確認されたと報じました。この2つの出来事を比較すると、北朝鮮の権力闘争はむごたらしいし、結果も一目瞭然ですが、一方 中共の権力闘争はテーブルの下で足を蹴ったり、裏で海外に噂を流したりするような手口を使っています。この違いの理由は何だと思いますか?

 

文昭

この違いはやはりナンバー1の権力の座の強さ、安定さによるものです。北朝鮮の場合、金日成時代から3代の70年間にわたる粛清を経て、挑戦を許さない金一族の権威を確立したのです。北朝鮮の権力構造としてはナンバー1だけが実力者で、ナンバー2以下は基本的に一般人と何も変りません。ナンバー2でありながら、ナンバー1にもの言うことができないし、実力もありません。その生死もナンバー1の思う次第ですから、北朝鮮の権力闘争は非常にむごたらしいうえ、結果も一目瞭然です。

 

金正恩は労働党の政治局拡大会議で、張成沢を逮捕しましたが、労働党委員の目の前でこの一幕を見せて、明らかに上層部の面々を脅かすためです。

 

北朝鮮中央通信社も全国の役人への警告を発信して、もっぱら最高権力者・金正恩に忠誠を尽くすことを求めました。中共の場合、事情が北朝鮮と大分違います。今の中共は最高権力者の寡頭政治ではなく、派閥が乱立してそれぞれの縄張りをもっていることから、ナンバー2ところか、ナンバー12もナンバー1にもの言う実力を持っています。

 

習近平の党内権力は金正恩ほどではないので、クーデータを発動して、相手を逮捕することができません。もしそうすれば、党全体に大きなショックを与え、政権の崩壊を招く恐れがあるので、習近平は用心深く事を運んで、外国メディアを使って噂を流し、根回しをしながら、役人に心の準備をさせ、派閥変えのチャンスを与えて、相手が完全に孤立するのを待って、捕えることにしています。

 

このほか、中国の国際環境も北朝鮮と違います。中国はもうグローバル経済の一部になっているので、国際社会の影響を受けます。共産党以外、中国社会で新たに成長している政治勢力が存在しています。これで、その環境が北朝鮮より複雑ですし、政治闘争も当然もっと複雑で、もっと根深いのです。

 

司会

習近平が就任してから取った一連の行動を観察すれば、政治的カリスマを目指しているようですが、果して金一族3代のような党内のカリスマになれると思いますか?

 

文昭

金正恩に特異な資質があるとは思いませんが、習近平は現状からして、金3世ほど強気に出ることはできません。政治的カリスマになるには歴史的な条件が不可欠です。例えば、王朝を作り上げたとか、大きな対外戦争の勝利を勝ち取ったとか、もしくは長老の支持を得たとかです。習近平はこれらの条件を1つも備えていません。彼がやったことはまず腐敗撲滅キャンペーンをして、民衆の信頼を得ようとし、党内部の威厳を樹立し、一部の官僚を排除しようとしています。次に ナショナリズムを煽り立て、日米に矛先を向けて、愛国のヒーローというイメージを打ち立てようとしています。しかし これらの手法には限度があります。まず 今中国は世界経済の2番手ですから、2番手が同時に1番手と3番手に喧嘩を売ることは理に合いません。つまり 実際戦争をしたら、日米に勝ち目がまったくないから、好戦的な姿勢はあくまでパフォーマンスで、本気ではありません。次に 国内の利益の絡み合い構造が複雑であればあるほど、透明な、公平な制度で社会正義を守る必要があります。これこそ歴史の流れで正しい道です。もし 習近平が本気でこれを実行すれば、当然自分のカリスマ性や人心を手に入れることができますし、高いレベルの理念ですから政敵にも阻まれません。残念なことにいまだ気づいていないようで、中共権力闘争の古い手法でことを進めているので、過去と異なる結果を期待できなさそうです。最後に中共と一緒に葬られる運命でしょう。天意に叶うこと、時代の流れに逆らわない事はもっとも大切です。

 

司会

これから中朝関係について話したいと思います。張成沢は北朝鮮上層部の親中派として見られています。数十年前を振り返ってみると、金日成が「延安派」を粛清したことがあります。今回張成沢が粛清された事は中朝関係にどんな影響を与えるでしょうか?

 

 

文昭

表に出る影響はないはずです。張成沢の失脚した理由は過度な権力集中、朋党集結で金正恩を脅かす存在になったからで、中国に近寄って、中共に学んで経済改革を行っているからではありません。実際 先月に当局が北朝鮮の各道で経済特区を設立し、資本主義実験エリアを拡大することを公表したばかりでした。つまり 中共に学んで改革を行うことは金正恩自身の思惑かもしれません。張を粛清したからといって、自分の考えを変えることはないと思います。また 張の存在は中朝の基本関係に影響を及ぼしません。ただ 1つの可能性は排除できません。メディアに報道されたように張が中国の改革に学ぶため、中国資本を導入しようとしたことは、北朝鮮労働党や軍部の上層部から強い不満を招いたということです。今 張氏自身や一族郎党が一掃されたので、空いたポストを埋める必要が生じました。金正恩に忠誠を尽くすのと中国に学んで改革を行うのと間で、金正恩は当然前者を重要視するでしょう。これから北朝鮮当局はもっと強硬な姿勢に出て、もっと北京の面子を潰して、在北朝鮮の中国企業に損害を加えるような事件を起すかも知れません。なにしろ北朝鮮は非常に予測しにくい政権ですから。

 

司会

周知の通り、北朝鮮の経済は殆ど中共に頼っています。普通なら金を出す側の立場が上ですが、中朝関係は正反対です。中共の顔を立てるところか、顔に泥を塗る事までしています。これは一体どうしてですか?

 

文昭

北朝鮮 とりわけ金一族は中共に対し、複雑な気持ちを持っています。経済的に中共に頼っていて、衣食の供給者ですから、盟友関係を維持せざるをえない一方、中共に強い不信感と猜疑心を持っています。もし 金一族が中共に媚びを売って、政治的にも北京の支配を認めていれば、北京が直接北朝鮮内政を干渉するだけではく、さらに将来の世襲継承者の廃止と擁立に影響力を及ぼすことも有りうるのです。このようなことになれば、金一族の核心利益を損ねるから、金日成時代からいつも親外国勢力の粛清をせっせと行ってきました。金日成が親ソ連の「ソ連派」や親中共の「延安派」を粛清した理由は、北朝鮮で金一族だけの「鶴の一声」の地位を築くためです。いわゆる「主体(チュチェ)思想」の由来も同じです。北朝鮮が経済的に中共に頼っていながらも、常に北京から指図を受けない態度を示しています。外国にこの態度を示す同時に国内にも示しています。もし 指導層や朝鮮労働党の者が外国と親交を深めれば、ナンバー1と対抗できる味をしめたら、金一族の地位が危うくなります。私は北朝鮮と中共の間に暗黙の了解があることを否定しません。一時期この暗黙の了解は両者関係の主な中身でした。すなわち 北朝鮮が反米の急先鋒という役を演じて、米国に無理難題を突き付けた後、中共が仲裁の役を演じて、漁夫の利を得たことです。しかし、これは中共と北朝鮮が親と子という関係を意味するものではないので、北朝鮮が内部粛清を行う場合、事前に中共に通報するのはまずありえません。長い間 中共がこの言うことを聞かない弟分のゆすりを容認してきたのは、中共内部に北朝鮮の反米の役割を過大評価する保守的な反米派が存在しているから。それに国際的にも中共の盟友があまりにも少ない、とりわけ共産主義イデオロギーの盟友が少なすぎるからです。

 

司会

北朝鮮労働党と中国共産党は今日まで生き延びてきましたが、それぞれ重度な内部危機に直面しています。どっちも内部の権力闘争という方法で、このような内部危機を乗り越えようとしています。また 一緒に人類文明に逆らって、独裁支配を維持しようとしていますが、天意にはかないません。視聴者の皆さんもぜひ予想してみてください、北朝鮮と中共のどっちが先に倒れるか。

ありがとうございました。

 

http://www.ntdtv.com/xtr/b5/2013/12/16/a1024874.html

(翻訳/中山 編集/坂本 映像編集/工)

 

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