【新唐人2015年05月04日】中国北部の水不足を解消するために南部の水を北部に運ぶ「南水北調プロジェクト」は、当初から大きな論争を呼んでいました。このプロジェクトに当局は3000億元以上を投じ、およそ40万人が立ち退きを余儀なくされました。2003年の工事開始から10年以上経って、ようやく送水が始まりました。しかし、ここにきて「北部の都市が南部の水を使いたがらない」という新たな問題が現れています。
ウォール・ストリート・ジャーナルが4月23日に掲載した長編報道によると、南水北調プロジェクトには莫大な費用がかかっているため、多くの都市は市民から徴収すべき水道料金の計算に頭を痛めています。また一部の都市は、送水に必要なインフラ設備の建設やメンテナンスなどにかかる巨額の費用に直面し、二の足を踏んでいます。つまり、多くの都市が南部からの水を使っていないという問題が現れているのです。
山東省徳州市も南水北調の水の供給を受ける都市とひとつですが、市の高官はウォール・ストリート・ジャーナルの取材を受けた際、実は2年前から南水北調プロジェクトの東ルートの水が徳州市付近のダムに流入しているが、徳州市はインフラ設備を建設しても、水を充分に使用できるとは期待していないと話しました。さらに、「ここ数年は水不足でもなく、黄河の水を使っている」とのことでした。
中国民間の水専門家 張峻峰さん
「東ルート地区のうち、山東省は水が通る地区です。地元で使用する水量は非常に少ないのです。京杭大運河に沿っているので、水の需要量はそれほど多くないのです」
この問題に対し、水利専門家は2つの原因を挙げます。ひとつは、水の供給を受ける都市の水の需要量がそれほど多くない。もうひとつは、多くの都市は送水のためのインフラ設備の建設およびメンテナンスにかかる巨額の費用を負担する力がないのです。このため、東ルートと中央ルートが完成しても、水の供給を受ける都市のインフラ設備建設はなかなか進まないのです。
中国民間の水専門家 張峻峰さん
「中央ルートの送水がすでに始まりましたが、このルートの水は河北、河南、天津、北京などの大中都市の生活用水としています。緊急に水を必要とする都市だけがこの水を使うのです。例えば天津や北京のような地区です」
一方、中国科学院の水専門家はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、南水北調プロジェクトのカバーする253都市のうち、プロジェクトのためのインフラ設備を建設した都市は半数未満だと話しています。また山東省の政府系メディアは以前、山東省全体で水の供給を必要とする都市は、インフラ設備の建設に230億元もかかると伝えました。しかし、去年の年末の時点で、工面できた資金は3分の1未満だそうです。
このほかにも、南部の水源地の汚染が深刻なため、北部の都市は地下水をくみ上げた方が南部の水を使うよりましだと考えていると指摘する専門家もいます。
ウォール・ストリート・ジャーナルも、南水北調プロジェクトの東ルートでは汚染が深刻なため、およそ400カ所の汚水処理施設、人工湿地やその他の汚染制御設備を建設し、巨額の資金を費やしたと指摘しています。
中国民間の水専門家 張峻峰さん
「東ルートの水は農業灌漑用です。主な目的は天津地区への送水です。送る水は淮河北部と黄河南部、山東等の水源地の水です。送水の過程で多くの汚染の深刻な地区を経過します。淮河の水自体が汚染が深刻なのですが、天津に到達した時は農業用水にも使えない、深刻な状態になるのです。だからこんな水を運んできても、何の意味があるのでしょう。使い道がありません」
大多数の都市が冷やかな反応を見せていることに対し、中共国務院南水北調弁公室のシニアエンジニア・瀋鳳生(しん ほうせい)氏は、これらの都市は水を使用しなくても、送水費用の支払い義務があると述べました。このようにしないと、地方政府がこの水を使おうとしないからです。
これに対し、民間からは不満の声があがっています。「三峡ダムプロジェクトが失敗し、南水北調も失敗している。当局は民意を無視し、国民の血税を無駄なプロジェクトに費やしている。今はまた強制的に費用まで徴収しようとしている。自分の金じゃないから、どうでもいいというのか」
新唐人テレビがお伝えしました。
http://www.ntdtv.com/xtr/b5/2015/04/29/a1193807.html (中国語)
(翻訳/赤平 ナレーター/佐藤 映像編集/李)