日本の魅力といえば、移ろい行く季節――四季は欠かせない。だが今、四季を感じることは難しい。エアコンの利いた室内空間には、厳しい冬も酷暑の夏もない。そして食べ物。冬のトマトや夏のほうれん草に、もう驚く者はいない。つまり「旬」がなくなってしまったのだ。だが旬のものこそ美味しい上に栄養豊富なのは、常識である。今日の話題は、この点を改めて実感させてくれる。
秋は乾燥の季節だという。漢方によれば、秋は収穫の季節であり、また冬の貯蔵に備えて、体内の物は内に向かっていく。水分もその内の1つだ。だから乾燥してしまう。そこで林先生が潤す食として取り上げるのは、蜂蜜・蓮根(れんこん)・梨である。後の2つは秋が旬であり、特にお勧めだそうだ。
例えば梨。梨の果肉は白いが、漢方では「白は肺に入る」という。また、この肺は皮膚や毛髪をつかさどり、潤いを与える。すなわち「肺主皮毛」。肺を滋養する梨は、皮膚のケアにとって大いに役立つのだ。
旬の食べ物は体に良い。これは漢方のある言葉に凝縮される。それはすなわち「天人合一」だ。すなわち、人の営みは自然の流れと連動するものであり、自然の流れに沿った生活を送ることこそ大切だと説いているのである。だが現代社会は自然の流れに対し、見事なまでに逆らっている。
前を向き、発展を追い求めることは悪くない。だが、古来脈々と受け継がれてきたものには多くの宝が隠されている。もちろん漢方も例外ではない。我々も時に立ち止まり、その智恵を温め直したいものだ。