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カルテ(十八)―優れた医者は人を治す

2010年03月23日

プラセボ効果という言葉をご存知だろうか。薬物などの治験を行う際、二つのグループに分け、一方には本物の薬を渡し、もう一方には薬効作用のない無害の偽物を渡す。渡す際には本物か偽物かを告げない。もし偽物を服用して改善が見られたら、それは「自分は薬を飲んでいる」という精神作用がもたらした効果である。これがプラセボ効果だ。

なるほど、「病は気から」という言葉があるように、精神面は確かに身体の健康を左右するらしい。ならば治療を受ける際、医者の言葉を信じることは大事だ。つまり「医者の言い付け通りにすれば必ず治る」と心を決める。これは治療効果を決定付ける要因のひとつになる。
 
だからといって、「患者は医者の言うことを全てうのみにすればよい。心に何か疑問が湧いてもそれを呑み込んで、口には出すべし」というわけではもちろん無い。医者を信じる。この大前提になるのは、医者が正しい理を述べていることだ。そしてもう一点、忘れてはならないのは患者を心から納得させることである。
 
人の考えは様々で、長年かけて築き上げられた固定観念にとらわれている場合もある。そのような固定観念を丁寧に解きほぐしていく、つまり相手にも分かる易しい言葉で、真に相手の心を打つように誠心誠意、理を説く。これにより、患者はようやく心から医者のことを信じることが出来るのだ。
 
こうなった時、人は考え方を改め、病気を招くような悪癖を捨てる。これが「優れた医者は病気だけではなく、人を治す」なのだ。つまり「中医医人」である。

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