赤ちゃんの誕生は文句なしに喜ばしいことだ。だがその一方で、うつで悩む妊産婦も少なくない。いわゆるマタニティブルーや産後のうつである。これはホルモンバランスの乱れと周囲の環境の急激な変化、この2つが主な原因だという。
では、産後のうつを防ぐにはどうすればよいのか。この2つの原因を取り除くのか。だが、どちらも避けようのないことだ。新たな命を育んでいくのにホルモン分泌の大きな変化は避けられない。家族の新たな一員が加わるという重大なイベント――出産で、周りの環境が変わることも避けられない。ならば残る方法はただ一つ。自分自身で感情の揺れを制御するのである。
漢方の有名な古書『黄帝内経』が、これについて重要な示唆を残している。つまり、「恬淡虚無なれば、真気是にしたがふ。精神内に守らば、病何れより来らむ」。欲望に淡白になりこだわりを捨てれば、精神を内から守ることができる。ならば一体どこから病気がやってくるというのだろうか。大体こんな意味である。
妊産婦といわず、人は生きている限り様々な波を避けて通ることはできない。楽しいことも、苦しくてつらいことも続々と訪れる。それらに心奪われて、気持ちをかき乱されるのか。それとも、それらを前にしても穏やかな心を保ち続けるのか。つまり、自分の気持ちを制御できるかどうかが心身の健康のカギになるのだ。
はるか昔、漢方ではこう説いたが、実はこれは西洋医学の理にも当てはまる。心乱れれば交感神経が過度に興奮し、免疫機能の低下を招く。ならば病気にもかかりやすくなる、というわけだ。
シンプルだが奥深い古人の言葉。真の健康とは、名医が与えてくれるものでもなく、高価なサプリメントで得られるものでもない。自身の気持ちを制御し穏やかな心を保つ。すなわち自分次第なのではないだろうか。