鹿の話ー嘘を言う人は「馬鹿」?
【冒頭の詩】
台湾の国宝、ニホンジカ
そびえる角が格好良い
すらっと足長、竹のよう
食べても飛んでもスピーディー
鹿を馬と言うなんて
嘘はばれるもの、早く目覚めて
【あらすじ】
「バカ」。日本人なら誰でもおなじみの響きだが、漢字で書くと「馬鹿」。辞書によるとその意味は、「知能の働きが低いこと、利口ではないこと。あるいはまた、その人」とある。では、利口ではないとはどういう意味なのか?まずは、この「馬鹿」の字の由来を探ってみよう。
これはある中国の故事に基づく。秦の時代、趙高(ちょうこう)という名の宰相はある時、鹿を連れて朝廷に赴いた。そして、この鹿を指して臣下に尋ねた。「これは一日千里を走る馬か?」趙高は、彼らが果たして自分に忠実かどうかを試したのだ。嘘をついてでも、自分の意見に調子を合わせる者こそが忠臣だと見たから。すると臣下らはみな、趙高の怒りを招くのを恐れて、口々に「馬、馬です」と答えた。
この故事が意味するところとは?「嘘、偽りを正しいと述べること」あるいはその逆に「正しいことを嘘、偽りだと述べること」。興味深いのが、これが日本では「利口ではない」という意味に発展した点だ。つまり、嘘を正しいという人は「馬鹿」だというのだ。
今では相手の意図をすばやく察して、要領よく立ち回る人を「利口だ」と表現することが多い。たとえ嘘をついてでも、相手の気に入るように立ち居振る舞いをする、これが利口だという。しかしこの番組は。それに疑問を投げかける。実は、全く逆なのでは?嘘や偽りを正直に間違っている、と言わない。つまり、嘘をつくのは利口ではない、「馬鹿」なのではないか?
番組を通じ、本当の利口さや賢さについて考えてみよう。
【漢字について】
1、甲骨(こうこつ)文字:
四千年近い歴史を持つ漢字の中で、最古のものとして残っているのが甲骨文字。殷の時代、国にとって重要なことがあると、亀の甲羅や牛の骨を焼いて占った。そのひび割れで出た占いの結果は、刻して記録された。この際使われた文字が、ずばり甲骨文字。
2、金文(きんぶん)文字:
甲骨文字の後、つまり殷・周から秦・漢の時代まで使われた文字。青銅器に刻されたり、鋳込まれたりした。ここでの金は、青銅器を指す。当時は、官職に任命されたり、戦功を上げたりすると、それを青銅器に記録したという。
3、小篆(しょうてん)文字:
金文の後に誕生したのが篆書(てんしょ)。これは小篆と大篆に分かれる。秦の始皇帝は、ばらばらだった文字を統一し、標準書体を定めた。これが小篆だ。
4、楷書(かいしょ):
南北朝から隋唐の時代にかけて標準となった書体。漢の時代まで使われた隷書から発展したもの。