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胃酸(二)―胃酸の異常には「内関穴」

2010年03月12日

「胃がむかつく」「胃がきりきり痛む」「胃がもたれる」など、胃にまつわる悩みは絶えない。これは、胃酸の量が多過ぎたり、あるいは少な過ぎたりすることが主な原因だ。つまり、胃酸の量のバランスが崩れた場合である。 

特に厄介なのが胃酸の過剰分泌だ。この胃酸が食道に逆流したり、逆に十二指腸に流れて行ったりすると、それらの器官が侵されてしまう。胃酸は強い酸性であるが、胃粘膜のように酸に抗う膜がないと破壊されるからである。
 
悩みの種になる胃酸ではあるが、もちろん大切な役目を担っている。それは蛋白質の消化だ。だから胃酸の量が少なければ蛋白質が十分に消化されなくなってしまう。それどころか、ビタミンB群やカルシウムの吸収さえ影響されるという。
 
しかし何よりも興味深いのは、なぜこのような状況が起きるかだろう。まずは食事である。不規則な食事、つまり長時間空腹であったり、逆に食べ過ぎであったりすることも原因になる。また、刺激の強い食べ物もリスクになる。
 
さらに、よく知られているようにストレスが多い、悩みがある、など情緒面も原因の一つである。
 
これらの状況に対し、まず現在の西洋医学では、水酸化アルミニウムで胃粘膜を覆う方法、または炭酸水素ナトリウムなどで胃酸の分泌を抑える方法がとられる。これらは確かに有効だが、一つ見過ごせない点がある。それは薬効が切れると反動が起こり、胃酸の量が逆に増えてしまうことだ。
 
そこで胡先生がお勧めするのは、漢方薬や鍼灸での治療である。
 
漢方薬で代表的なのは、烏賊骨(うぞっこつ)やバイモで作る烏貝散。また、脈のパターン(寒熱実虚)に基づいた処方もある。熱過ぎれば、黄連(おうれん)を含む寒性の左金丸(さきんがん)で、胃の熱を取る。もしも虚、すなわち気が不足している場合は、それを補う処方として、四君子湯や六君子湯を用いる。
 
このほか情緒が原因ならば、「逍遥散(しょうようさん)」が使われる。
 
さらに、鍼灸も有効だ。多くの方が経験しているように、胃酸過多になると胸焼けがする、つまり実はこれは、「心(しん)」と関係するのだ。だから、心包経へアプローチする。例えば、「内関穴(ないかんけつ)」。このツボを活用する。
 
この「内関穴」は胃酸が多過ぎる場合、少な過ぎる場合、どちらも有効だ。漢方は、ただ単に何かを増やしたり減らしたりする物ではない。体の本来あるべきバランスを取り戻すための治療をするからである。

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