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カルテ(二十三)―恋の病も漢方で治せる?

2010年04月12日

突然だが、「傅山(ふざん)」という人物をご存知だろうか?明から清へと王朝が変わる、激動の時代を生きた中国人である。傅山は、気骨の文人として多くの詩や書を後世へ残した。また、仏教や道教の書にも通じた優れた医者でもあった。したがって、この傅山が診た数々の逸話は現在まで語り継がれている。今回は、そのうちの一つを取り上げて、ご紹介する。

傅山は、ある時、山西省の高官の母親を診察することになる。傅山が母親を観察し、状況を理解してから下した診断、それは……何と「恋の病」であった。
 
実は、母親は若くして夫に先立たれた。その後、寡婦として長年独り身を通してきたという。そんな母親に突如下された診断が「恋の病」であった。高官はこれに激怒する。だが、母親は率直にこれを認めた。実は、ふとしたきったけで亡き夫の遺品を目にし、急に夫への強い思いがこみ上げてきて、病に倒れてしまったのだった。
 
そして傅山はこの診断に基づき処方を出す。その結果、母親の病は改善したのだった。
 
現代人は「心の病」にかかったら、まず精神科医や心理カウンセラーを訪れるであろう。漢方医に頼ろうとする者はまれに違いない。しかし意外にも、心の病こそ漢方にとってお手の物なのである。
 
漢方では、病の原因を外因、内因、不内外因に分ける。この内、内因が心、すなわち「情」が原因で起こる病のことである。つまり「七情(喜怒 憂 思 悲 恐 驚)」で、この「七情」が五臓六腑を傷つけるのだ。例えば、喜びは心を傷つけ、怒りは肝を傷つける。憂いや思いは脾を傷つけ、悲しみは肺を傷つける。驚きと恐れは腎を傷つける。
 
よって、漢方医がまずすべきことは「七情」の何が深刻なのかをつかむ。そして、この「七情」を落ち着かせるよう対処すれば、病も解決できると考えるのだ。
 
古代の名医の一人、張子和(ちょうしわ)もこんな言葉を残している。「驚者平之」つまり、たとえ「驚き」に出くわしたとしても、それを「平常」のこととして受け止めれば、病を招かない。すなわち、「七情」に惑わされることなく、穏やかな心を保つ。これこそ健康の秘訣なのである。
 
 

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