若い女性でなくとも、ほっそりとしたスリムな体型にあこがれる現代人。そこで、ことあるごとにダイエットにまつわる話題が飛び交うが、しばしば太る元凶として目の敵にされるのがデンプン類の食べ物、つまり穀類である。というのも、穀類はエネルギー源であり、ビタミン・ミネラル・蛋白質が特に豊富ではないためであろう。では、漢方ではこれをどう見るのか。
実は漢方において、穀類は極めて重視されている。『黄帝内経』の記載によれば、「穀類は五臓を養う」。つまり、気血の材料となって体の土台を作るのである。だから、人にとってなくてはならない食べ物なのである。
では、ほかの食べ物の役割は何なのか。同じく『黄帝内経』によると、果物は消化を助ける物であり(「五果為助」)、肉などは五臓を補う物である(「五畜為補」)。穀類こそが体を養う主役であり、ほかの物は脇役に過ぎないのである。
これは何もおかしいことではない。我々日本人にとって、最も身近な「米」を見てみよう。わずか一粒の米からあれほど多くの米が実るのである。どれほどの生命力であろう。古人は米をはじめとして、アワや稗(ひえ)など穀類を珍重した。「穀類こそが体の源」という点に気づいていたからではないだろうか。
温故知新。科学がいくら発展し、技術も日進月歩で進化していても、我々現代人はまだまだ古人に学ぶべき点は多いようだ。