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カルテ(二十七)―先入観は禁物

2010年05月02日

癌、それは現代人にとって最も恐ろしい病気の一つだ。その内、皮膚がんの一種である悪性黒色腫は生存率が極めて低いという。胡先生は今回、世界でもまれな、この悪性黒色腫の症例を皆様にご紹介する。

 かつて胡先生が診たという悪性黒色腫の患者は、世界でも5例目であった。治療方法が確立されていない上、ほとんど症例すらない悪性黒色腫。だが胡先生は「世界でもまれ」「生存率が低い」「難治性」などの言葉に惑わされなかった。ただただ、漢方の弁証方法に従ってこの患者を診察したのである。 

実は彼の頬(ほほ)の裏側には大量の潰瘍ができていた。これは漢方で見れば「胃火」、つまり胃ののぼせである。よって胡先生は胃ののぼせをとる処方を彼に出した。すると、この患者の頬に存在していた腫瘍が何と消失したのであった。完治とはいえないものの、難治性の癌の一部が消えた。これは現代医学から見ればまさに奇跡といえるのではないか。
 
これを偶然や自然現象と見るのか、あるいは漢方の底力と見るのか。西洋医学に慣れ親しんだ現代人にとっては、これはなんとも理解しがたい現象かもしれない。だが、漢方の理に照らせば決して不思議なことはない。「のぼせ」があったから「のぼせ」を取る薬でそれを除いた、ただそれだけのことなのである。「難治性」は西洋医学の理でとらえた見方に過ぎないのだ。
 
漢方と西洋医学、この二つはどちらが進んでいるか、あるいは正しいかという問題ではなく、病気に対する見方やとらえ方が異なる。だが忘れてはならないのは、漢方は、数千年もの間実践を重ねてきた学問だという点だ。その実践を通じ数々の秘方が生まれ、核となる概念が形成されてきた。漢方には今回の例を含め、実に多くの不思議な症例が残されているが、それらをただ「偶然」「自然現象」とくくることはできないだろう。ただ、我々の先入観が強いとこれらを受け入れられないかもしれない。この先入観を脇においてみたとき、改めて漢方の秘める力、奥深さにため息を漏らすことだろう。
 
 

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