今回のカルテの主人公は、60数歳になる男性。彼は、わずか二歳半のときに奇病を患う。医者は病名も分からぬまま、彼に三時間おきに注射をした。しかも不幸なことに、この時彼のそばには寄り添う両親もいなかった。こんな孤独で苦しい治療が二十一日間も続いた後、彼は突如、激しい笑いが止まらなくなった。この激しい笑いは60数歳になる今日まで続いていた。そんなある日、彼に転機が訪れることになる。
恐らくまず一つ目は、母親の寄せた信頼。これにより彼は自尊心を取り戻し、ありのままの自分を受け入れたのだろう。もう一つは、赤子の純粋さ。この純粋無垢な赤子を抱いている時、彼はこの子に幼い自分の姿を重ねたに違いない。そして、彼は感じ取ったのだ。無条件に捧げられた母親の愛を。それが彼の傷ついた心を癒してくれたのであろう。彼は本来の自分、本来の自分の心を取り戻したのである。純粋無垢な心を。